スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

水を巡らす肺の働き

 日本漢方では肺と大腸、皮膚が汗による水の調整と関係が深いとされている。一方、中医学では肺には宣散、粛降の作用があるとしている。宣散とは、宣は宣伝の宣であるから広げる、散らすという意味がある。即ち血液や津液(細胞外液)を全身に散らす、巡らすという意味になる。粛降とは、粛は粛々と言う言葉が示すように、静かに下ろすという意味。息を吸ってその酸素を全身に降ろすという意味になるだろうか。
 従来の呼吸に関する一般的な認識から考えると、肺の働きは吸気によって酸素を取り入れ、呼気によって炭酸ガスを排泄するものである。その上に水や血液をコントロールするというのであるから、もう少し踏み込んで微妙な調節作用に眼を向けてみる必要がある。吸気では横隔膜が収縮し、外肋間筋が収縮し胸腔が広がるから、胸腔は陰圧、腹空は陽圧になる。この陰圧で空気を肺に取り込む。体内においては上下大静脈から静脈血が心臓に還流する。このときリンパ液はどうだろうか。解剖実習でみたリンパ管は比較的固かったから、この程度の陰圧では余り影響は受けないかもしれない。この静脈還流によって末梢の毛細血管には新しい血液が入り込み、古い血液は静脈側へ移動する。次に呼気である。呼気では横隔膜、外肋間筋が緩み、胸腔は比較的陽圧になるので静脈還流は一時的に止まる。このとき腹腔圧は比較的陽圧となりこのとき門脈に集まる腸管の静脈系の血液は肝臓に向かって押し込められる。また腹腔リンパ液は胸腔に押しあげられると考えられる。
 さらに意識的に腹圧をかけたら、即ち腹式呼吸で腹前壁を腹後壁に近づけるようにしたらどうなるであろうか。静脈還流・リンパ還流もさらに促進されることが推測される。胆嚢は吸気によって下に押し下げられるので圧迫され、胆汁が排泄される。呼気では胆汁がたまってくると考えられる。
 このように考えると呼吸運動は横隔膜の動きに密接に関連して、単なるガス交換の作用以外に、目立たないが体液循環に大きく関与している事が理解されてくる。しかも強力に腹圧をかける腹式呼吸にするとさらにそれが促進されることも理解される。また静脈還流やリンパ還流が促進されると四肢や身体の表面のむくみの改善にも影響すると推測される。
 更に漢方ではストレスがかかると肝気鬱結すなわち右季肋部の圧迫感が起こり、腹診で胸脇苦満として捉えられる。この胸脇苦満が如何にして発生するかということについては余り考察されていないように思う。胸脇苦満は右季肋部に抵抗と不快感があり、何となくそうであると受け入れて診療してきた。そこで、静脈還流、リンパ還流が低下した状態で肝臓に鬱血が起こった状態で胸脇苦満が起こると考えてみた。ストレスの状態では呼吸が浅くなり、静脈還流の効率が悪くなり、下大静脈の鬱滞が起こると考える。すると其の下流の肝臓に血液がプーリングを起こして肝気鬱結となると考える。そこでストレスへの対応として呼気を延長する腹式呼吸を行なうと静脈還流が促進され肝気鬱血が解消すると考えられないいだろうか。呼気延長は副交感神経を刺激し興奮を鎮めるので、心身ともにリラックスする仕組みになっているのではないだろうか。座禅などの健康法は自律神経を興奮を鎮める以外に血液、体液循環にも地味に気・血・水の調節に関与している事が理解されてくる。
 今回は少し難しい事を考えてみた。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。