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耳鳴りについて

 耳鳴りは多くの人に見られる症状である。高齢になるとその頻度が高くなるようである。たかが耳鳴りではあるがその対応について最近考えさせられることがあった。
 まず耳鳴りは耳鼻科で診察を受け、とくに心配するような原因、つまり脳腫瘍などの病気がなければビタミン剤の処方などが行なわれ、積極的な治療はされないようである。というのも有効な治療がはっきりしないからであろう。
 漢方では耳は腎と関係があると考える。すなわち老化を腎虚と考えるのである。年をとると性ホルモンが減少する。すると体のみずみずしさが失われて組織が萎縮してくる。耳の組織でも三半規管や蝸牛菅のリンパ液が減少し、聴神経の血液循環が悪くなり、その症状として耳鳴りや難聴が起ってくると考えられる。そこで治療としては老化に伴う組織の循環を改善することを考える。老化にともなう体液の減少を緩和するために八味地黄丸などの補腎剤を使う。また脳の動脈硬化に伴って起る頭痛に効くとされる釣藤散なども有効な場合がある。比較的若い人の場合の耳鳴りには、赤ら顔で逆上せに伴う場合は黄連解毒湯を使うこともある。またむくみの傾向がある場合には五苓散をつかう場合もあろう。このようにその人の漢方的診断に応じて薬をきめるのであるが、必ずしも皆良くなるわけではない。少しでも軽くなればもうけものと思ってくださいと、最初で念を押しておことである程度は納得してもらっている。
 耳鳴りは年をとってくると多かれ少なかれ出てくる症状である。それを病気として徹底的に排除しようとむきになると、かえってそれが気になり、頭は注意を耳鳴りに奪われて、自縄自縛になり、どうしようもなくなることが問題と思われる。そういう状況を踏まえ、耳鳴りは程度に係わらず多くの人が持っている症状であり、目先の優先すべきことに注意を集中するとき耳鳴りを忘れている現実があることを説明する。すると、ある程度の耳鳴りは仕方がないということに同意してもらえる。そこで、耳鳴りを完ぺきに除こうとするより、邪魔にならない程度であれば、受け入れたほうが良いと説明して納得してもらっている。
 最近、耳鳴りを訴える方が見えた。非常に神経質になっておられた。耳鳴りの漢方治療を希望しておられるので先のようなことを一通り話したところ、ご自身の経験に照らし合わせてある程度受け入れられるということで、少し精神的に落ち着いてこられた。このような場合まず耳鳴りの治療より先に気持ちの興奮、癇の高ぶりを沈める治療が先ではないか考えさせられた。
 その方は耳鳴りについて耳鼻科で機械的に対応されて非常に腹が立って病院に石を投げたくなったといわれるのであった。なぜ腹が立ったかというと、耳鳴りが良くならないというと、次の言葉は機械的で『薬は飲みましたか? ちゃんと飲んでおられるのなら薬の量を増やしましょう。』或いは『別の薬を追加しましょう。』という言葉が続き、こちらの苦痛について理解してもらっていないと思われたからであった。そのときさらに衝撃的なことを言われた。『以前大病院で若い耳鼻科の医師が老人にナイフで刺された事件がありましたよね。多分あの患者さんも耳鳴りで通っておられ、機械的に対応されて腹が立って傷害事件に及んだと思いますよ。』と確信的に話された。機械的な対応で耳鳴りの苦痛を受けとめてもらえないとき、自分でも同じような気持ちになりますというのは衝撃であった。
 あらゆる苦痛を治療で完全に除去できれば問題ないのであるが、それが適わないときには、治療者の側が患者の苦痛に共感することで少しは気持ちも緩むのではないかと思うのである。短時間に大勢の患者に対応しなければならない外来では、つい対応が流れ作業のように機械的になってしまうのではないかと考えさせられる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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