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わかりにくい発熱の症例

 発熱にはさまざまな病因がある。最も多いのは風邪の悪寒のあとに起こる発熱である。寒い北風やクーラーに当たり続けると自動調節による体温維持が困難になり、非常手段による体温維持装置が作動したのが頭痛・悪寒・発熱・関節痛などの症状で起こる風邪である。また細菌感染に伴う発熱は抗生物質が発見されるまでは、死に直結する発熱で、深刻な問題であった。虫垂炎や胆のう炎、髄膜炎、気管支炎、肺炎、結核など内臓の感染症や炎症は、過去には容易に死にいたる病気であった。二十世紀に有効な抗菌剤の発見、開発により、外科治療などを併用すると十分治癒可能な病気になった。したがって発熱が起ると細菌感染の有無を確かめるのも基本的な診断手順になる。さらに近年では膠原病などの慢性の炎症性疾患も不明熱の原因に挙げられ、膠原病の検査も欠かせない。
 ところで最近、おそらくは漢方的病態認識がないと見当がつかないような発熱の症例を経験した。数ヶ月前に高熱が出たので解熱剤を使用したら汗をかいて解熱したが、しばらくするとまた高熱を出して同じことを繰り返し、その間隔が次第に狭まって、ついには毎日のように熱が出て仕事もままならないというのである。病院を何箇所も受診したが原因がわからないため長期戦を覚悟しているということであった。数ヶ月も高熱が出ているにしては比較的全身状態はよく保たれている。
 そこで患者さんに確認したことは、職場や自宅のクーラーの使用状況であった。クーラーの設定温度が低い上に薄着をすると身体はその比較的低温環境に順応していくものの、その限界を超えると微熱を出してくるという事例を私は過去に経験していた。確認したところ、職場が寒かったという。すると、おそらくクーラーで冷えた職場で長時間に亘って仕事をしていて少しずつ低温に慣れ、風邪は引かないものの、微妙に体温維持に困難をきたして次第に体温が上がって発熱したのではないかと考えられる。最初は微熱程度であったのが、長時間の低温環境で、熱をだして少しずつ体温を上げなければ体温を維持できなくなった。それがかなり高熱になったため、解熱剤で体温を下げたところ、発汗・解熱した。すると冷された体は、温まろうとしてあげた体温を急激に下げられたので、更に高熱を出したと考えられる。
 この場合の発熱のポイントは体温を上げて身体を守ろうとする発熱だから、薬で体温を下げるべきでないことである。せっかく身体を温め守ろうとして上げた体温を解熱剤を使って下げられると、身体はむきになって更に体温を上げ、これが繰り返されたのであった。これを続けて元気を使い果たし、体温を上げることができなくなると体温を維持できなくなり、命に係わる冷えの状態になると推測される。
 更に患者さんに確認したことは、体温が上がって高熱を発するとき身体は楽になったのではないかということであった。その応えは高熱にもかかわらず身体はほっとしたという。したがってこの発熱は身体を守るための反応であったことは間違いないと確認された。
 このような冷えによる発熱には身体を温める治療が基本であるから、絶対に解熱剤を使わないように指示し、傷寒論の少陰病にある茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)という附子の入った処方を飲んでもらって身体をあたためたところ、気分がよくなり、その晩から次第に解熱に向かい、約一週間で平熱にもどった。
 よく余病を併発せずに数ヶ月も続いていたものだと思ったことであった。
 このような病態の発熱を漢方で真寒仮熱という。真の病態は寒つまり深刻な冷えであるのに症状としては高熱を発することを示す概念で、漢方の優れた病態認識を示したものと私は考えている。また冷えによる発熱でも風邪とはことなる経過をとる場合があり興味深い。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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