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瞑想について

 最近やっと瞑想を再開しようと思い、実行に移した。学生時代に禅寺に通っていた時の座禅の体験があるので、その気になればいつでもできると考えていた。しかし、世事にかまけていて、いざやるとなると時間と場所の確保に折り合いがつかず、先延ばしにしてきたのであった。何よりも座禅をしようという強い動機がなかなか訪れないため、其の気にならなかったというべきであろう。最近研修医時代の同窓の先生が瞑想を治療に活用している情報に接し、大学の同窓の先生が年来の深い宗教的な疑問に答えを得て、本格的に宗教活動を始めている話などが新聞を通じて届いてきたため、いよいよやらなければと其の気になってきた次第である。
 久し振りに座禅の形に入る時にまず困ったのは、若いときと違って膝の関節の可動域が狭まっているため、膝を曲げにくいということである。普通座禅には結跏趺坐と半跏趺坐がある。両足をそれぞれ反対側の太股にのせる結跏趺坐は若いときでもきつかったので半跏趺坐にしていた。ところが椅子に座る生活を長年続け、還暦を越した現在では胡坐をかくことすら苦痛を伴うほどに身体が硬くなっていた。そこで正座にしようと深く膝を曲げると痛みが厳しいので、曲げた膝と尻の間に小さなクッションを入れて隙間を造ると少し楽になった。
 次に腹式呼吸である。下腹を引っ込めてできるだけ長く息を吐き出し、腹の力を抜くと自然に吸気に変わり、それに合わせて一つ、二つと呼吸を数える。十までいくとまた一にもどりそれを繰り返す。これを数息観という。できるだけ呼気を長くすると次第に落ち着いてくる。呼気は自律神経のうち迷走神経を刺激するため、副交感神経優位に調整され、心臓の興奮も鎮まり落ち着いた気分になる。これを続けると禅定にはいる。身体全体が一つの固まりになって各部位の感覚がなくなった状態。あたかも墨絵の達磨のような感じになる。一塊の身体の上に頭だけが乗っている。非常に穏やかな感じで膝の痛みよりも座禅の上体の気分がいいので、其のまま長い時間座れるのではないかと思う。此の瞑想の果てに何があるのかわからない。
 心理学でいえば共同無意識、原意識になるのかもしれない。仏教では末那識、阿頼耶識、菴摩羅識など無意識を表す言葉がある。
 腹式呼吸による瞑想の医学的意義は副交感神経優位のきわめて情緒的な安定にあると思われる。世の中ストレスまみれで、あれはいや、これわいや、あれもない、これもない、の愚痴と不平不満の世界である。七情すなわち喜怒悲思憂恐驚の情動に翻弄されている。これは交感神経優位の極めて不安定な世界である。免疫的には好中球が増えて炎症を起こしやすい状態、膠原病などの難病の準備状態、癌免疫が低下した状態である。つまり瞑想は健康増進にも大いに役立つ養生法でもある。ただ実行することが大変なので、多くの人は知っていてもやらないのではないかと思う。
 漢方薬は傷寒論を原典にしており、それは風寒つまり冷たい風に吹かれて風邪を引くという、寒冷刺激のストレスによって引き起こされた生体の交感神経優位の状態に対し、漢方処方で副交感神経優位にしてバランスをとろうとする治療である。また七情による自律神経やホルモンバランスを漢方処方で調整する。さらに鍼灸治療もストレスに晒されて肩こり頭痛などに悩む身体にリラックスをもたらし、痛みを除く治療手段である。このように東洋医学は交感神経優位の落ち着かない状態を副交感神経優位の落ち着いた状態に誘導しようとする作用があり、瞑想の身体作用に共通する部分がある。
 このように見ると瞑想は道具を使わない、誰にでも開かれた健康法であることが理解される。ただ意を決して実行するにはある種の壁を越えなければならない。何よりも正座の苦痛に耐えなければならない。其の上で禅定に至るまである程度の期間持続しなければならない。これを宗教的には難行といい、自力と呼んだ所以と思われる。
 何はともあれやっと日課として瞑想を始めることにした。
 座禅を続けていると、同じ姿勢を続けるときの足の痛みと、腹式呼吸による穏やかな状態が合わさって独特の状態にある。感覚はきわめて研ぎ澄まされて覚醒しているのに心の状態は極めて穏やかになっている。矛盾した状態なのである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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