スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

母児同服について

 漢方薬の飲み方で母児同服という方法がある。字の示すとおり母親と子供が同じ漢方薬を飲むことである。例えば子供が癇癪もちで落ちつかないとか夜泣きで困っているというときに、子供だけでなく母親にも同じ漢方薬を飲んでもらうのである。
 そこでなぜ同じ漢方薬を飲むのかという素朴な疑問が起こる。
 子は親の鏡という言葉がある。親子の絆は強いだけに親の立ち振る舞いはそばにいる子供に強烈に影響し、その影響を受けた子供が不安定になり、落ち着かなくなるのでそう言われたと思われる。それを病気の治療法として表現したのが母児同服である。その初めはイライラによく効く抑肝散という漢方薬を落ち着かない母親に処方し、母親がその煎じ薬の一部を子供にも飲ませるようにしたと先人の本には書いてあった。
 かなり以前のことであるが不眠を訴えた母親が外来に見えた。神経質そうな子供を連れてきていた。よく聞いてみると夜中に子供が何度も起きるので母親が眠れないというのであった。『では子どもが眠ればあなたは眠れるのだね』と念をおして子供に夜泣きの漢方薬を処方した。すると子どもはその晩からぐっすり眠ったのであるが、母親はそれでも眠れなかったという。そこで『ひょっとしたら子供の不眠の原因は落ち着かないあなたにあるかも知れないですよ。』と改めて母親に不眠の漢方薬を処方したら、親子とも落ち着いてきた。そこで母親に告げた。『子供よりはもともとはあなたが落ちつかなかったのでではないですか? 子供は比較的単純であまり複雑にものを考えないので普通は不眠症にならないですよ。ところが母親が落ち着かないとそのストレスを直接子供が受けるので、まず母親の治療をします。したがって子供の治療だけではうまくいかないですよ。』そこで母親は決まり悪そうに納得した。
 最近も肩こり、不眠、下痢、冷え症など複雑な症状を訴える婦人が見えた。漢方薬もいろいろ組み合わせて処方し、鍼灸治療なども併せておこなったところ少しずつ落ち着いてきた。しばらくすると子供も眠りが浅く、落ち着かないで困っていると相談があった。このように母親と子供は強い絆で結ばれているだけにお互いに強い影響を及ぼしやすいので親子併せて治療しないといけないことがよくわかる。
 また、成人した娘の不定愁訴の治療をしていくうちに母親の生き方が強く関与していることに気付いたため、母親も診察を受けるように進めた。すると母親は更年期障害の延長で、その上に人生に行き詰っていることが明らかになった。背景には家庭の長年のしきたりの問題が横たわっていることも見えてきた。このような場合、患者本人の治療だけでは問題の本質に迫れないため、家族単位でカウンセリングなどを受けることも必要になってくる。これも漢方の母児同服を更に広げたような治療の考え方である。すると仕舞には社会や国の現代の諸問題にまで広がっていきそうである。
 漢方はその症状を訴える患者の生活の場に病気の原因があると考えるので、このように親子関係、家族関係にも範囲を広げて問題を解決していく場合がある。その一つがが母児同服という漢方薬の飲ませ方ではないかと思う。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。