スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

更年期はライフスタイルを見直す時期でもある

 女性の更年期はわかりやすい。これまで毎月あった生理が不順になり、ホットフラシュ、イライラなどが突然に起こり、何かおかしいと感じさせる自覚症状を伴うからである。大した自覚症状が無くても生理が止まることは大きな変化で、人生における肉体的な節目をはっきりと告げるため、年齢を意識させるに違いないと思われる。ところが男性の場合は女性の生理があがるようなドラマチックな変化がないので、自覚することは少ない。夜中に目が覚めやすい、夜中にトイレに起きるようになる。耳鳴りが気になる。精力の衰えを感じる、などが微妙な変化であるが、それで身体のリズムが極端に変わるわけでもない。最近では更年期が取り上げられ、ホルモン療法などが効を奏することもあり、注目されるようになってきた。特に漢方では肉体の加齢的な変化を腎の働きとし、老化を腎虚と考えており、更年期特有の症状に有効な漢方薬もある。
 ところで日常診療で気になる更年期のもっと重要な点は、身体が老化に向かって変化してきているのに、意識は若い時のまま変わらないことではないかと思う。人間の一日一日の老化に向かう変化は非常にわかりにくい。しかし一年たつと明らかに変化していることがわかる。運動能力にしても日常の動きではわからないが、少し負荷のかかった動きでは力の衰えや、持久力の低下を感じる。とくに40代は体力もさほど衰えず、経験をつんで仕事や社会における対応もしっかりできて組織の原動力になり、最も力の充実を感じるのではないかと思う。しかし、40代前半と後半を比べると明らかに無理が利かなくなっていることがわかる。睡眠不足からの疲労回復が遅れたり、夜の眠りが浅かったり、夜トイレに起きるようになったりなどである。これらの症状の日々の変化は微妙であるから多くの場合気づかない。ましてやそれが生活を見直すきっかけになることはまず無い。日常の仕事は若いとき同様にバリバリこなしているし、判断力決断力も衰えていない。そこで仕事ができる充実感と達成感から、頑張る意欲はついつい体力の衰えに目をつぶり、無理を重ねてしまいがちである。
 疲れがある程度たまって、疲れがとれない、眠りが浅い、やる気が出ないなど日常業務に支障をきたすようになって初めて医療機関を訪れることになる。そのときその人が考えることは、ちゃんと治療すればまた元のようにバリバリ仕事ができるようになるということのようである。特に更年期の頃に体調を崩すサラリーマンや企業家にはこのような場合が多いという印象を受ける。特に体力もあり能力もある活動的な人ほどその傾向が強い。
 ところが医者の立場からはこの時期に体調を崩すことになった原因は、身体の加齢的な変化を無視した無理な仕事のやり方にあると考える。従って、若い時期からやってきた力任せの仕事のパターンをそのまま続けることに無理があることを身体が訴えているので、仕事をやりすぎないように、十分休息を取るように、仕事の配分を考えるようにと指導する。更年期の不調は若いころの身体の不調とことなり、身体の変化に対応できないライフスタイルや仕事配分により、精神的肉体的に無理が起きていることに起因する。従って、それらを改める生活指導と医学的治療を平行して行わないと治療効果がでにくいのである。
 年を重ねてもバリバリ先頭に立って頑張ろうという場合、総合的な評価、判断、決断のほうにアクセントをおき、肉体的作業はできるだけ若い人に頑張ってもらうような工夫をしないと遅かれ早かれ身体のほうが音を上げてくる。
 スポーツなどでも更年期を過ぎると、若い人と張り合わないようにと念を押す。若い人の身体の瞬発力、持続力、疲労回復力と比べると、当然ながら更年期の方が絶対に劣っているので、どんなに運動神経がいい人でも、若い人と張り合うと無理がたたって身体の故障をおこしてしまう。
 肉体的年齢の曲がり角の時期には身体の微妙な声に耳を傾け、健康をそこねないように、生き方の軌道修正をする必要がある。もしこの時期に体調を崩すようなことがあったら、それは仕事の無理が心と身体の能力の限界を超えていると素直に受け入れること。そして日常生活の仕事の配分や身体への負担のかけ方を根本的に見直し、軌道修正をすることである。それが後半の人生の健康と不健康の分かれ道ではないかと、診療を通してしみじみと感じる。
 健康長寿のために年齢に応じて身体をいたわる余裕を持ちたいものである。
 また漢方薬は適応症によって使い分けるが、その病態に応じた生活指導を徹底することが、その効果を最大限に引き出す条件ではないかと考えている。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。