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人体の丈夫さは胃腸の丈夫さ

 漢方に虚証、実証という考え方がある。実とは病邪の実、虚は生気の虚といわれている。病邪とは病気の原因となるもので、いわゆるカゼであれば風邪(ふうじゃ)、冬の感冒であれば寒邪ということになる。つまり冷たい北風に長く当たって皮膚が冷えて、自動的に温めもどすことができなくなって、寒気が起こり熱をだすカゼを引いた状態になる。一方では皮膚の抵抗力・防禦機能が落ちて、生気が虚したために風寒の邪の侵入を許したと考える。皮膚の防禦機能が正常でも寒さが強力であれば、新型インフルエンザのように多くの人が感染するのである。
 ところで虚実にはそれ以外に新陳代謝が活発で抵抗力が強い人を実証、逆に新陳代謝が低下し、元気の無い、冷え症でおとなしい人を虚証と呼ぶ場合もある。実証の人は風邪に対する抵抗力も旺盛なので症状派手で、悪寒・発熱が強く赤い顔をして騒ぐのが通例である。例えば強い国同士の戦いであれば戦闘も激しく、死傷者も多く被害も甚大になるが、強い国と弱い国の戦いであれば抵抗する力が弱い分、小規模な戦闘で戦争は終わってしまうようなものであろう。
 そこで新陳代謝が旺盛な実証の人とはどのような人のことであろうか。一番わかりやすい目安は胃腸の丈夫さではないかと思う。胃腸が丈夫であると食欲が旺盛である。それは消化吸収が効果的におこなわれ、活動のエネルギーすなわち生命エネルギーを十分に確保できる事を意味している。多少消化の悪い物でも下痢することも無く、なんでも食べる。したがって皮下脂肪も適度について筋肉も十分に太く、強い力が出せ、予備のエネルギーを蓄え、皮膚のしまりはよく、外界の気象の変化にもすばやく対応し、風邪を引きにくい。ストレスによって食欲が落ちることもほとんどない。寝つきがよく睡眠時間も十分にとれるというところであろうか。
 渡辺淳一は『鈍感力』という言葉を作り出したが、まさにそれに当てはまる人が実証の人ではないかと考える。周囲の変化に対してあまり影響をうけずに、マイペースを貫けるのである。これは体が鈍感ということではなく周囲の多少の環境変化や精神的、肉体的ストレスに対して無意識の自動調節によって対応できるということである。すなわち鈍感力の持ち主は肉体や精神の自動調節すなわち自律神経やホルモンのバランスが安定しており、ストレスと感じるまでの刺激が相当強いということを意味している。それを俗に心臓に毛が生えているとか殺しても死なない、泰然自若などと表現していると思う。日露戦争でロシア陸軍と戦ったときの総司令官の大山巌がその典型ではないかと思う。朝から戦闘が激しく皆あたふたと上へ下への大騒ぎ。そこへ大山元帥『今朝はうるさいが何かあったか?』とのっそりと起きだしてきたら、皆はそこで浮き足立った状態から我に返ったということが『坂の上の雲』に描かれていた。
 これに対して胃腸の弱い人は少しの環境の変化に敏感である。少し冷えると鼻風邪になり、ちょっとしたストレスで食欲が落ちる。神経が過敏で常にぴりぴりしている。食は細く、皮下脂肪も少なく、青白い顔をしている。なま物やこってりした味の濃いもの、揚げ物などが胃にもたれる。このような人の場合少し風にあたるとすぐにカゼを引きやすいかわり、無理しないから重症にもなりにくいという特徴がある。
 このように胃腸の丈夫さはその人の人生を深く特徴付け、左右する。胃腸の弱い人はいい人生は送れないのかという疑問が湧いてくる。そんなことは無い。車に例えれば、排気量の少ない軽四輪が虚証で、排気量の大きい乗用車を実証と考えればよい。軽四輪でも燃料の補給がちゃんとおこなわれ、積載量の制限を守れば何処までも走ってくれる。要するに自分の排気量を認識してそれに応じて走ることが大事である。大容量の自動車だって無茶な運転で事故にあって大破することもある。
 つまり己を知ることが大事で、自分の身体は自動車の排気量では大体どのくらいかを考え、それに応じた荷物を運べば十分快適で健康に過ごせるということだと思う。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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