スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

身体は借り物、魂の乗り物

 幼少頃や若い頃は身体と心の思いのギャップが少ない。自分即身体つまり心の思いと身体が一体となっていたようである。こうしたいと思って身体を動かすとほぼその通りに身体がついて行く。全力で走れと身体に命令すると自分の運動能力の範囲内で全力疾走できるのであった。ところが中年にはいって仕事が忙しく運動から遠ざかって何年か経ったある日、気がついたら全力疾走できなくなっていた。全力疾走で膝にかかる体重を関節が支えきれなくなっており、体重負荷による痛みのためスピードを上げることができなくなっていた。運動から遠ざかっている間に体重は増え、筋力は衰え、靭帯の強度も落ちていた。普段から運動を続けておれば心肺機能、筋力、関節の強度は維持できたはずである。
 さらに年をとるともっと深刻になる。十分に曲がっていたひざが曲がらなくなって正座ができなくなる。またラジオ体操の前屈の運動で手が床につかない。
 首を伸展させ天井を見上げるとき十分伸展できない。五十肩で手が後ろにまわらない、まっすぐ挙上できない。
 こうなると心の思いと身体の機能とに相当のギャップが出てくる。心の中には子供の頃から現在に至るまでのそれぞれの年齢の自分の記憶がある。当然その自分の心はまだ自分が老人であると思っていない。それどころか恋に震えた若い時のこころがまだ続いているとしたらどうだろうか。年取った体に若い魂が宿っているとき、まだ心は若いのに、身体がいうことを聴いてくれない、という不満が出てこよう。つまり、心の年齢と身体年齢のギャップが大きくなり、あたかも青年が修理の十分でない中古車にのっているような気分になるのである。
 人間の体は車と同じ様なものであると考えてみよう。新車の間は少少乱暴にのり、手入れをせずにほっておいてもちゃんとエンジンがかかり、スピードもでる。つまり車は自分の意のままに走ってくれるのである。時間がたって中古車になると、まめな整備点検をしないと調子が悪くなり、走れなくなる。バッテリーが切れ、電球が切れライトがつかないのは白内障に例えることができる。すなわち運転手の思いと車の性能にギャップが出て、自分と車は一体と感じられなくなる。それでも定期的な点検をおこない、部品を変えたり、油をさしたり、オイルを交換するとちゃんと走ってくれる。ところが人体は簡単に部品を変えることはできないし、できた場合でももとのじぶん身体のほうがもっとよかったという思いがぬぐえない。
 身体の老化にともない心と身体のギャップが大きくなってきた時にしみじみ心と身体はべつだなあと思う。こんなに心は若いのに身体は思うように走ってくれない。愛車のように大事に扱ってくれば身体はもっと言うことを聞いてくれただろうに。自分の身体を大事に使うのは自己責任である。若いころから食事、運動に気を配り、身体をいたわり、大事に使う習慣を身につけるべきであると思うようになる。
 このようにみるとこころと身体が一体であると感じる若いころは『こころに起こったことは必ず身体に影響を及ぼす』という言葉のように『心身一如』という考えが病気の複雑な仕組みを示してくれる。ところが身体が思うように動かせなくなる高齢になると、身体は魂の乗り物であるという見方がうまれ、自分の心から身体を離して客観的に見つめられるような視点が起こってくることが実感される。すると身体も借り物だから大事に遣わなければならないという思いが生まれてくる。もう少し若い時期にそのような感覚がもてればもっと自分の身体に敬意を払い、大事に扱ってきたのではないかと思う。さらに言い換えると自分の身体の健康管理をもっと意識的に積極的に行なったのではなかと思う。
 一方では人は年をとるにつれてこのように心と身体をはなしてみる視点が育ち、自分の身体の衰えからくる最終的な死を客観的に見つめ、死を受け入れやすくなっていくのかもしれない。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。