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漢方薬でハブ咬傷の治療はできるか?

  昨年末、九州支部学術総会に参加したとき演題の中に蜂刺症に関する発表があった。沖縄で蜂に刺されて病院に来る人はめったにいなかった。ところが本土ではスズメバチに刺されてアレルギーによるショックのため救急車で病院に運ばれる場合が多いようである。命に関る場合もあるようで、その蜂刺症の漢方治療が紹介された。臨床症状で特に問題なのは手足の腫れであるという。紹介された症例の症状は腕がパンパンに腫れて痺れ、コンパートメント症候群といわれる状態になった症例であった。
  コンパートメントというのは仕切られたスペースのことである。腕の何処に仕切られたスペースがあるかというと腕を曲げたり、伸ばしたりする筋肉のグループがそれぞれまとまって屈筋群、伸筋群として一つの筋膜に包まれている。筋膜に包まれたスペースをコンパートメントと呼んでいる。
  ではコンパートメント症候群とどのような病態であるかが問題である。蜂に刺されて毒が筋肉に作用して筋肉が浮腫んできた状態で、筋膜に包まれたスペースは筋肉のむくみのために広がって、それ以上広がれなくなるとコンパートメントの圧が上昇して筋肉の血流が低下した状態をさす。つまり組織圧が上がるのである。組織圧が血圧より高くなると新鮮な血液が筋肉に供給されなくなるため、一定時間を過ぎると筋肉は酸素欠乏のため死んでしまう。筋肉が壊死に陥って溶けてしまうのである。すると腕の筋肉はなくなって、骨に皮がついているよう状態で、腕の曲げ伸ばしができなくなってしまうのである。そうなるとその人は一生腕が使えない深刻な障害を負ってしまうことになる。
  従来その治療は外科的なもので、筋肉が壊死に陥る前に筋膜を切開してコンパートメントを開いて組織圧を下げ筋肉を生かすことである。そして筋肉の浮腫みが取れた時点で再び皮膚や筋膜を縫い合わせるのである。
  このような病態は一般的には筋肉の打撲などで起こるが、沖縄ではハブにかまれて手足が腫れた時に起こり、ハブ咬傷の悲惨な後遺症となっていた。ところが近年の救急体制の整備とハブ毒に対する抗血清の開発やコンパートメントを減圧する筋膜切開など外科治療の確立により、適切に対応すれば悲惨な後遺症をみることもなくなってきた。
  この場合内科的治療はタイミングよく抗毒素血清を注射することであったが、あのスズメバチに刺されて起こったコンパートメント症候群が漢方薬の投与で回避できるというのでびっくりしたのである。それは漢方薬が抗毒素血清や外科治療に匹敵する効果を持つことを意味する。しかも手術をしないですむなら手術後の傷跡が残らないので漢方薬による治療のほうがすぐれていることになる。
  コンパートメント症候群に使われる漢方薬は黄連解毒湯7.5g、大黄末1.5g、茵蔯五苓散7.5gをまとめて溶かして冷たくして一度に内服するということである。その後は症状を見ながら漢方薬の量を減らしてよくなるまで内服を続けるというのが要点であった。これらの処方はいずれも炎症によるむくみを除く作用があり、しかも内服する量が多いので効果があると容易に想像できる。
  外科的処置に匹敵する効果が漢方薬にあることを聞いて私も思わず興奮してしまった。だれかハブ咬症でこれらの漢方薬の効果を追試してくれないだろうか。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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