スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

変わった病態による咳

 今年は春から夏にかけて本格的に暑くなるのに時間がかかった。ところが暑くなり始めると短期間のうちに気温が急激に上がり、クーラーの調節や飲料水の摂取による体温調節が難しいような印象を受ける。そのような状況が外来の患者さんの訴える咳の性質も微妙に違うような気がする。その中で極めて珍しい咳があった。
 30代の男性である。喉にむずむずする感じがあって咳が出る。くしゃみ鼻水を伴う咳では麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)に麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)を組み合わせ、冷えが強い場合は苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などでよくなる咳の場合が多い。また喉のムズムズを気にする場合は半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)にする。ところがこのような範囲の処方でまったくよくならない咳が人がいた。そこで腹をみると鳩尾(みぞおち)が硬く、あまり飯が食えないというのとストレスが多いという訴えから、ストレスで胃の内容物が十二指腸に排出されにくくなり、食物が食道に逆流してそれが喉を刺激して咳が出るという病態を考えた。そこで大柴胡湯去大黄エキスに半夏厚朴湯エキスを組み合わせて処方したら、ぴたっと咳が止まって、こんなに気分のいいのは初めてだと言われた。このような咳の傾向は子供のころからあったことを初めて聞かされ、こちらもびっくりしたのであった。
 人体にはストレスが起こると胃の出口の幽門が緊張して胃が縮んで胃の内容が十二指腸に流れにくい病態がある。漢方では「心下急、鬱々微煩」という、鳩尾(みぞおち)が突っ張って不快感があるという症状が起こる。それに対してストレスを緩和する柴胡・芍薬の組み合わせで対応し、胃腸のつかえを枳実芍薬で解除する組み合わせになっている大柴胡湯が効く。さらに食道から喉の逆流には半夏厚朴湯が効くので、的を射抜いたように効果が出たと理解した。
 漢方薬の効果を最大限に発揮させるためにはその症状の成り立ちすなわち病態生理を的確に把握することが不可欠であると改めて実感した。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。