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高齢者の死に対する不安

 最近高齢者で悪性腫瘍に対する漢方治療を求められることがあった。漢方薬で何とか治してほしいという。その人に合いそうな漢方薬を処方するのであるが、当然のことながら背景には死に対する不安が見える。その人の本音は完全に癌が治ることで絶対的な安心が欲しいようである。しかしそれは無理なことで、一般的な死に対する心構えが十分でないことに問題があるようで、次のように話している。
 病気を完全に治す事を優先的に考えて、それが理由で心が落ち着かない状態が続いている。病気が治るように治療することは当然のことであるから、治療をつづけることは大事である。しかし病気の事ばかりを考えて毎日を過ごすのもまた問題である。高齢に成るほど残された人生は少ないのであるから、体が動く元気な間を有意義に過ごすこと考えることが大事である。癌で死ぬかもしれないが、それは少し先の事で、今何をしておけば人生の終わりに自分が納得できるかよく考えて、いまやるべきこと明らかにしてそれを実行するべきであると。
 病気の事ばかり考えて、今何をすべきかを考えないのは、ある意味現実からの逃げの部分がある。年をとることで一日一日人生は短くなっていることを認めるなら、もっと一日一日、一瞬一瞬を大事に生きるべきであることは、ガンにかかっていてもそうでなくても同様に明らかなことで異論はないと思われる。
 年をとって余命短くなると、癌で死のうが、其の他の病気で死のうが、老衰で死のうがあまり差がなくなってくる。
 若し九十歳の人が死にたくないと訴えたらどうだろか? 平均余命が男80歳、女87歳くらいであるから、その人はとうに平均余命をこしているから、いつお迎えが来てもおかしくない年であることは明らかである。すると死の恐怖を訴えることに少しは遠慮も出てくるのではないかとも思われる。寿命があるという否定できない現実がその人に無言の説得力を持ってくるのではないだろうか。
 瀬戸内寂聴さんが九十歳を過ぎて腰を痛め、入院加療を余儀なくされ、さらに癌が見つかり、手術を受け、リハビリを行い、ADLを取り戻していく過程をNHKが紹介していた。彼女にとって一番つらかったのは腰痛で座ることができないことであったといわれた。また癌の手術でうけた全身麻酔の経験から、具体的な死は麻酔のように気持ちよく眠るような感じであることを実感できたため、死に対する恐怖はほとんど感じられないともいわれた。そして生きようとするエネルギーの源はなんであったかと言うと、食事ではタンパク質、脂肪をよく摂る事、日々の生き方においては小説を書く事であった。人々に自分の体験を読んでもらい、喜んでもらう事が心を高揚させ、連続4~5時間の執筆でも疲労感を感じないまでに集中力の源になっていたことが見て取れた。
 このようにみると毎日何をすべきであるかはっきりしていないところに漠然とした不安が迫ってくるのではないかと思われる。すると今日自分は何をすべきかを具体的に考え実行することが不安の特効薬であることが見えてくる。それは一人一人、自分で考えるしかないことである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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