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肝経の湿熱

 漢方の中でも後代いわれた言葉に『肝経の湿熱』という言葉がある。肝経というのは鍼灸における厥陰肝経という経絡、すなわちツボをつなぎ合わせた気の流れの通路の名称である。具体的には足の親指の爪の外側の付け根の角から少し外側に寄った太敦というツボから足の甲の内側寄りを上向し、下腿前面内側、膝関節前内側、鼠蹊部から外陰部を通り、下腹部前内側を上向、肝臓の上を通り、胸部側面から腋、鎖骨の上の窪みを通って則頸部を上向し、耳から頬のあたりまでつながっている。湿熱というのは現代医学的には炎症による浮腫のことであるから、上に示した厥陰肝経の通路に起こった炎症を肝経の湿熱という。
 肝経の湿熱をきたす病気には現代医学的にどういうものがあるかと云うと、足の方から挙げて見ると、先ず足の親指の炎症である痛風である。また同じ部位の水虫もそれにあたる。少し上に行くと下腿前内側の湿疹や化膿性の病気、静脈瘤による炎症。もう少し上の膝にいくと、膝の関節炎である。さらに上にいくと鼠蹊部のリンパ節縁である。さらに進むと陰部の炎症である。陰部の潰瘍や尿道炎、前立腺炎、膀胱炎、膣炎などがある。更に上にいくと肝臓や胆嚢があるので、肝炎や胆嚢炎もそれにあたる。更に上にいくと乳房があり、乳腺炎があり、腋のほうでは腋の毛嚢炎やリンパ節炎、首の方へ行くと頚部リンパ節炎、更に耳の周りの炎症、顔の吹き出物や炎症口内炎も挙げられる。このように実に多くの病気が肝経の湿熱に属していることが分かる。そんなに沢山の病気が龍胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)が効くというのが、後世方派という漢方流派のふれ込みである。この処方は竜胆(リンドウ)山梔子(クチナシ)黄芩など炎症性浮腫を除く生薬に地黄、当帰など血流を増やす薬、車前子(オオバコの種)沢瀉など浮腫みを取る薬を組み合わせて、いわゆる肝経の湿熱に対応している。
 私が竜胆瀉肝湯は肝経の湿熱によく効くということを実感したのは15,6年前ハートライフ病院に勤務していた頃であった。ある時鼠蹊部から陰嚢にかけて蒸れやすいところに湿疹ができて、鼠蹊部の皮膚が爛れて歩行もままならないという老人が見えた。もう何年も皮膚科に通っているがよくならないという。竜胆瀉肝湯を処方したら一週間で好転しそのうち治ってしまったのには私の方がびっくりした。
 また研修医の頃、慢性前立腺炎の患者さんは治療の効果が上がらず医者泣かせで、ドクターショッピングをする代表的な病気であると教えられた。生殖器の慢性炎症は竜胆瀉肝湯であると考え、この処方を使いだして比較的効く感触を得て、それで困るようなことは無くなった。
 また最近、鼠蹊部の顔面の湿疹を伴いながら陰茎がただれて困るという人が見えた。仕事で酒を飲む機会が多く、過労気味であるという。竜胆瀉肝湯で即座に手ごたえが得られた。この方のように酒を飲むと前立腺や、膀胱、痔など下半身の病気や湿疹など炎症性の病気は確実に悪くなる傾向がみられる。アルコールにより組織が充血し熱を帯びるので、それが炎症を悪化させると考えられる。すると肝経の湿熱という病態はアルコールのように顔が赤くなり熱を帯びる、すなわち炎症を起こしやすい飲食物の摂りすぎによって起こる可能性が考えられる。従ってお酒の飲みすぎや過労、睡眠不足など身体に内熱を引き起こすような生活は改めるような養生の指導は不可欠である。又からし類などの刺激物もその強く温める作用により炎症が悪化すると考えられるので注意が必要である。いくら漢方薬が効くといっても病気を悪化させる生活要因を放置しては効く薬も効かないのは道理である。
 このように病気が起こってくる病理がわかると、其の人の生活背景の何が悪さをしているかも見えてきて漢方薬による治療が効果を発揮してくる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

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