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水分の摂取で介護度が改善した

 先日テレビである介護施設での取り組みを紹介していた。其の施設では意思の疎通の取りにくい介護度の高い手のかかる高齢者が入居してしばらくすると、意識がはっきりし、自分の力で自発的に動き、意志の疎通も計れるようになったという、びっくりするような事を紹介していた。それはできるだけこまめに水分を摂るように促すという単純なことを実行しただけであった。その簡単なことがお年寄りの意識を鮮明にし、活動の範囲を広げたのであった。それはお年寄りたちが普段多くの場合脱水の状態にあることを示している。なぜ水分摂取が少ないかというと、トイレに行く回数をできるだけ減らすために、水分を可能な限り減らすということで慢性的な脱水になるからだと紹介していて興味深かった。このことは適切な水分量が健康な体の働きの維持、具体的には体の組織の血液循環の維持に極めて重要であることを示している。
 同じような病態の患者さんを以前に経験したことはあった。主訴は原因不明の発熱で体がだるいと云う事であった。入院して検査をしたが、血液検査でも特に異常なかったので原因が分らなかったが、ある時一日の尿の回数が1~2回と極端に少ない事に気づき脱水が原因であることに思い至った。その患者さんは脳性マヒで、体が不自由で装具をつけ、松葉つえを使って移動していた。それでトイレの回数が多いことを負担に感じ、水分の摂取量をできるだけ減らしていたのであった。その結果便秘をして、皮膚が乾燥し汗をかかず、微熱が出て、体がだるい、何となく元気が出ないなどの症状を呈したのであった。水分摂取を促し適当な尿量を確保するように指示したら微熱も収まり、他の症状もよくなり退院した。
 水分の不足が慢性化した状態を漢方では陰虚という。この状態では全体の水分量が不足するので、水の排泄で体温調節するようにできている人体は、脱水のため体温をスムーズに下げることができない。その結果内熱がこもってくる。水分の排泄はまず発汗であるが、汗が減るので皮膚が乾燥しがちになる。皮膚はカサカサになり皮膚がかゆくなる。また口の中が乾燥して物が呑み込みにくくなり、便が硬くコロコロになり、便秘する。尿量が減少し、尿が濃縮されてコーヒーの色になり膀胱炎のような症状が出やすくなる。そして神経が過敏になりイライラして不眠になる。そのうち頭がボーとして働きが悪くなるなどの症状が起こってくる。
 このような状態は徐々に起こるので、少しずつ体が脱水に慣れて症状が出にくいので本人も周囲も気づきにくく 見逃される可能性が高い。そして一定の限度を越すと症状が出るのではないかと考えられる。また認知症であればさらに症状が悪く複雑になることも考えられる。したがって体が不自由な人や高齢者に慢性の脱水が起こりやすいということをしっかり心にとめる必要がある。
 このような病態が比較的短時間に起こると脱水症、熱中症という状態になり、命に係わる状態になる。これは急激な変化で皆も注意しているから比較的わかりやすい。
 このような人は普段からしっかり水分の補給を心がけることである。最近認知症の人が増えているが、水分摂取の不足が症状を悪化させていることがあるかもしれない。
 漢方には脱水を伴う状態に使う処方があるので、そのような漢方薬を併用するともっと効果的である。動悸息切れがあるとき炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、カラ咳が出るときに麦門冬湯(ばくもんどうとう)や滋陰降火湯(じいんこうかとう)、便秘に麻子仁丸(ましにんがん)や潤腸湯(じゅんちょうとう)、皮膚が乾燥して痒い場合に当帰飲子(とうきいんし)、火照って熱い場合に白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、不眠に酸棗仁湯(さんそうにんとう)などである。尿が近くて手足が火照る場合には六味丸(ろくみがん)を併用する。
 若い人の場合水分の過剰摂取で水毒に注意するが、高齢者の場合は摂取不足の陰虚に注意するというのも年代による病態の特徴がみられて興味深い。
プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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