スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

漢方の食事指導

 漢方の診療というと漢方薬を処方することであると考えがちである。それは間違ってはいないが、ほかにも大切なことがある。それは、なぜその漢方薬を処方するかという患者の病態生理、つまり病気の成り立ちをしっかり把握することである。それはその人が現在の病気に至った生活背景を反映したものであり、衣食住を含め、家族関係、社会生活が含まれる。診療の実際では病気に直接関係している部分に注目するのであるが、最も重要であると思われる事柄を中心に情報収集している。ストレスが症状の中心に来れば、仕事や人間関係などに注意を向けるし、冷えが中心になると衣食住、とくに食のほうに目をむけるのが一般的な対応になる。
 特に冷えが病態の中心にある時は、体を冷やす作用のある飲食物に注目する。現代社会では冷蔵庫による飲食物の保存が基本になるので、多くの人は冷蔵庫の冷えたものを直接口にすることが少なくない。冷たいものが胃腸を冷やすことは誰も否定しないのであるが、それが健康状態にどのように影響するかということまでは考えないことが多い。それでも冷蔵庫の冷たい飲み物が腹を冷やすことを指摘すれば容易に納得できる話である。
 ところが食物そのものの性質によって冷えるとなると一筋縄には理解しにくい。なぜならその食物が冷たくなくても、或いはホットでも食物の性質により体を冷やすので、その知識がないと気付かないからである。
 東洋哲学には五行説がある。木・火・土・金・水が五行で、臓器では肝・心・脾・肺・腎が対応し、それぞれ酸・苦・甘・辛・鹹の味が対応している。それらの間には木は燃えて火になり、火は灰・土を生じ、地面から金が生じ、水は金属生ずるというような相手を活かす相生の関係と、木剋土、土剋水、水剋火、火剋金というような相手の働きを抑えるような相克の関係があるとしている。このような自然界の仕組みを漢方にもあてはめている。それは自然界における五つの要素がお互いに刺激し、抑制し合いながらバランスをとりつつ存在すると考える東洋哲学の優れた発想であると私は理解している。
 五行説に基づく五味の効能から見ると、現代社会の生活状況で最も体の冷えに影響するのは甘寒の性質の食物である。砂糖や果物による甘寒の食物、サラダなどの生ものである。特に世の中には甘いものが氾濫しており、その影響は深刻であると考える。次に冷えに関与すると思われるのは、苦寒の性質を持つビールやコーヒーの嗜好品である。ビールは冷たい物を一気に飲んで咽喉越しを味わうので冷える事はわかりやすいが、コーヒーはホットで飲むのになぜ冷えるか、という点がわかりにくい。コーヒーの好きな年配の方が、腹が張って便秘がちであるが、下剤を使うと下痢をして気分が悪いと訴える人や、腹がはって便が緩いと訴えてみえる人がいる。また逆に甘味に分類され、身体を温める甘温の食物は肉や魚などの蛋白質である。
一方では体を温めるのは漢方でいう腎の働きである。それを強めるのは塩辛い、鹹味とされている。代表が食塩(シママース)で海の物に多く含まれている。納豆や小魚、海藻、山芋などが鹹温で、それらを甘恩のあわせて摂る事で、冷えに対応するのである。
 つまり冷え症の人は蛋白質をしっかり摂り、甘いものや生もの、果物は控え目にして、コーヒーもほどほどにして小魚、海藻などミネラルをしっかりとるようにと指導したうえで漢方薬をしっかり飲んでもらい、冷えの害を避けるように指導している。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。