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交感神経の緊張と副交感神経の機能低下

 自律神経には交感神経と副交感神経がある。交感神経は昼間活発に活動するときに働くエネルギー消費の神経、副交感神経は夜休むときに活発に働くエネルギーを蓄える神経である。
 交感神経が緊張すると呼吸が早くなり、心拍数が増え動悸を感じ心肺機能が高まる。それによって動物は危機を脱する仕組みになっている。生理学ではfight-or-flight reaction、つまり闘争・逃避反応と呼んでいる。その時、副腎からアドレナリンやストレスホルモンが分泌され心肺機能が高まり、筋肉の血流が増加し、危機を回避できるように体が反応する。これは正常の機能である。つまり身が危険を感じたときに起こる反応であるから、危険を感じないときは動悸も起こらない。ところが過労や緊張を長時間続けると交感神経の緊張状態が続くので普段の安静時にも動悸が起こりやすく、食欲もわかないという状態が起こりえる。
 さらに交感神経の緊張状態が続きその人が臆病な性格で、少しのストレス刺激に過敏に反応すると仮定するとその人はどのような症状を呈するのだろうか。交感神経に対するちょっとした刺激で動悸が起こる。また交感神経の緊張で副交感神経の働きが抑制されているので胃腸の動きは極端に抑制される。それで食事も欲しくなくなる。そこで不安が起こったら、動悸が簡単に起こるし吐き気も起こりやすくなると考えられる。このような症状が実際に起こった人がいたのである。食べ物を見ただけで動悸が起こるというのであった。
 このような場合、西洋医学的な対応では各種検査で異常なし、治療の糸口が見つからないと思われる。せいぜい抗不安薬で不安を和らげて自律神経のバランスが戻るのを期待することであろうと思う。
 ところが漢方薬では怒り、不安などを鎮めて交感神経の緊張からくる、副交感神経の抑制つまり胃腸の働きを抑える効果を改善する処方がある。いわゆる肝気欝結(かんきうっけつ)に有効な柴胡剤(さいこざい)である。さらに副交感神経の作用が抑制されて起こる消化管の蠕動異常を調える処方がある。半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の類である。消化管の蠕動抑制が長引くと胃内に食物や胃液が停滞し、胃もたれ・ゲップなどの症状が出る。そのようなときに胃の内容物をスムーズに十二指腸へ送り出し、消化吸収を促進する作用の六君子湯(りっくんしとう)などの処方を使う。同じような状態で動悸や立ちくらみが起こる時に苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を使う。さらに元気がなく胃腸が冷えて下痢を伴うような場合に人参湯(にんじんとう)や大建中湯(だいけんちゅうとう)、真武湯(しんぶとう)などと副交感神経を刺激・強化するする処方が漢方では目白押しである。 
 このようにみると漢方を抜きに自律神経の不調を回復させる治療法は極めて難しいことが理解されてくる。
 とくに漢方薬の治療効果で注目したいのは副交感神経を活性化する方法として二つの方法があることである。一つは怒りや不安を鎮める、つまり交感神経の興奮を鎮めてその結果副交感神経に対する抑制を取る間接的方法。もう一つは副交感神経そのものを刺激する方法。具体的には直接胃腸の働きを活性化する治療になる。さらにもう一つはこれら二つの方法を組み合わせて同時に行うことである。漢方薬の生薬構成をよく見ると処方はこのような原則にそって組み立てられている。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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