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低音が出ないので何とかしてほしい

 七十歳代の男の人が声の低音が出ないので何とかしてほしいと言って来られた。高い音は出るというので、声を出す神経は大丈夫であるということは分かった。
 声の専門は耳鼻科であるから、「耳鼻科の先生はなんと言われました?」と聞いたところ、声帯が完全には閉じていないと言われたという。すると治療は両側の声帯の隙間をふさぐことになるのであるが、普通の常識ではそういう方法はないので、どうにもなりませんといいたくなる。
 ところが漢方薬の効果をうまく応用すると何とかなるかもしれないと思いつくことがあった。70歳というと一応加齢による影響を考える。老人の体は若い人よりは体の水分の割合が少ない。つまり若い人より組織は水分の割合が少ない。すなわち枯れた組織は縮んで細くなる。すると若い頃密着していた声帯も水分が少なくなった分だけ組織がしぼんで細くなり、隙間ができたのではないかと考えてみた。
 するとその治療は組織に潤いを与える漢方処方を飲んでもらって、少しだけ組織をみずみずしくすれば隙間は埋まるのではないかと考えられる。
 加齢により組織の水分が少なくなった状態を漢方では腎虚(加齢)による陰虚(脱水傾向)と呼んでいる。すると“腎を補う”つまり腎臓の水を貯える作用を強化し、声帯すなわち“肺”のあたりを潤す薬を処方したらいいのではないかと思いついた。そこで体に潤いを与える漢方薬を処方した。さて結果はどうだろうか?
 暫くして来院されて声の具合を聞くと、「何となくいい感じです。」と答えられた。少しでも良く成ればしめたものだと考え、引き続き漢方薬を内服してもらうことにした。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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