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涙の意味2

 かなり以前に「涙の意味」という題で文章を『東洋医学の雑記帳』に書いたことがある。涙という字は“さんずい”に戻るという字の組み合わせである。すると涙というのは戻す水ということになる。何を戻すのかということになる。傷ついた心を本来の落ち着いた心に戻すということを,実際に涙を流してみれば実感できると書いた。そして文字を汲め立てた先人の心の在り方に触れた思いがして、意味の適切であることに感動した。
 この度は実際の臨床で漢方薬をのんだら涙が止まらないということが起こったので、改めて涙の意味を考えさせられた。
 更年期前後の女性で、交通事故で追突され首が痛いということで見えた方である。更年期に使う漢方薬、生理痛の漢方薬などを組み合わせて処方し、針治療も行った。治療費は事故の加害者が保険に入っていないので、自賠責の保険でカバーされない為、自己負担が多く困っておられた。一通りの治療が終わったが、気持ちがすっきりしないようで、イライラしているのに気持ちが内にこもる状態の人に処方するとされる抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)を飲んでもらった。その処方を飲みだしたら涙がとまらないと電話がかかってきた。その薬の副作用ではないかというのである。
 それで答えた。「悲しみや辛い感情で涙が出るということは悪いことではない。涙を流すことで感情を発散することができるのです。だから涙が出ることは悪いことではないと思います。薬が効いているのではないかと思う」と。そしたら少し納得されたようであった。あれからどうなったか確認していない。
 おそらく心の高ぶりを抑える処方で気持ちが落ち着き、自然につらい気持ちが素直に表現され、悔し涙として表現され少しは気分が楽になったのではないかと推測する。漢方薬の興味深い効果と考えた。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

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