フクロウ型の人たち

 体がだるくて朝起きれない。昼前までだらだらと寝て、昼過ぎからやっとエンジンがかかり、夜遅くまで起きるような生活パターンの人たちをフクロウ型というそうである。夜行性のフクロウの習性に例えてそのような名前が付いたと思われる。このような人達は昼夜の地球のリズムに対して自律神経の切り替わり、すなわち夜間の副交感神経優位から昼間の交感神経優位への切り替わりが遅れていると推測される。体のリズムが昼型社会のリズムとずれるので、学校・社会生活に支障をきたし、深刻な問題となる。内科で診察を受けて起立性低血圧という診断はついても、他の検査に異常はなく効果的な治療がない。 
 漢方の成書では苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を多めに飲むとよくなるとされている。苓桂朮甘湯は桂枝・甘草・茯苓・白朮の四味の生薬からなる。桂枝・甘草の組み合わせで心臓の動悸を鎮め、茯苓、白朮で胃腸の働きを良くし、腸から水分の吸収をよくする結果、循環血液量が増えて動悸も立ちくらみもよくなるような仕組みの処方である。すなわち交感神経の興奮を鎮め、副交感神経を活性化する、いわば自律神経を調整する処方である。
 漢方の古典では、風邪を引いて発汗在や下剤などで治療してもよくならないときにこのような苓桂朮甘湯の有効な状態が起こる場合があるとしている。
 最近朝は元気がなく、やっとで起きて学校に行っても教室には行けず、保健室で休んでいるというという女の子が来た。青白い顔、冷え性、なんとなく浮腫みっぽく、生理痛もひどいし、頭痛やめまいもあるという。いじめなどの問題はないようである、先に紹介したフクロウ型のタイプのように見えた。ところがこの子の場合は猫背で姿勢が悪いので、頸椎のレントゲンを見たところ、頚椎が左に傾く、いわば側弯の形になり、棘突起も右側に寄り、大きく右に捻じれたような変化を伴っていた。このようなレントゲンの所見があると、首を反って天井が見にくい、首が回りにくいなど頸椎に動きの制限が起こり、自律神経が不安定になる。
 針の治療を行い、鎖骨調整により頸椎の歪みを治したら首の動きがよくなると、気分もよくなったという。苓桂朮甘湯、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などを処方して治療を続けたらみるみる元気になり、普通に登校できるようになった。
 このように苓桂朮甘湯は動悸、立ちくらみなど、自律神経の働きが弱いようなときに使う。元気な人は日常の動作に交感神経を興奮させる必要はないが、フクロウ型の人たちは、体に少し負担をかけると交感神経が緊張し、胃腸の働きも抑制され、無理が効かないのではないかと思われる。診察すると胃内停水、胃に水が溜まってポチャポチャと聞こえ、臍の上に動悸が触れるなどの腹部の所見が見られる。
 このようなことからフクロウ型の背景には頸椎の歪みに伴う自律神経失調があるのではないかと考える。
プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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