舌痛症

 最近舌の痛みを訴える人が目に付く。舌痛症とは女性に多い原因不明の舌の痛みを訴える病気で治療法もはっきりしない。したがって舌の痛みに加えイライラが募り、遂には不眠を合併し、症状がさらに悪化していく悪循環を形成するようである。
 漢方の立場から病態を考えてみた。更年期を過ぎる頃、女性ホルモンが減少してくることにより、体の水分量が微妙に少なくなり、唾、涙などの分泌も微妙に低下し、汗もかきにくくなるので体が火照ってくる。すると口の中も唾が少なく粘っこくなり不快感を生ずる。そのうち内熱で口の中が乾き、舌のヒリヒリが痛みに変わってくる。効果的な治療法がないため、不安感も募りイライラするとさらに唾液の分泌も低下して症状はさらに悪化する悪循環に入ると考えられる。さらにイライラから不眠などを合併し、さらに内熱は強くなり、症状が袋小路に入ってしまうのではないかと考える。
 体の水分が減少する状態を漢方では陰虚という。陰虚の状態では脱水傾向のため汗や尿に体の熱を効率よく排泄することができないので内熱が起こる。此の熱を虚熱と云う。この状態を改善するためには体に潤いを与え、虚熱を冷ます治療が必要となる。漢方薬には滋陰降火湯(じいんこうかとう)の名前が示すように陰を滋潤し、熱を冷ますそのものずばりの有効な処方がある。イライラする状態には柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、抑肝散(よくかんさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)などが有効である。疲れているのに眠れない時に酸棗仁湯(さんそうにんとう)がある。最初の症状に加えて二次的な病因が加わり、多彩な症状がみられるので、評価が難しくなるが、適当な漢方薬の組み合わせで治療できるのではないかと考える。
 陰虚、虚熱などの概念のない現代医学では病態の理解も治療もできないので、対応に限界があるのはごく当然に思える。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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