訳のわからない胸痛

 原因不明の胸痛で何年も困っている人を時々診る事がある。いろいろな検査をしても原因がわからず、一日中痛むので不安になり、日常生活がきわめて不快になり困っている。
 胸痛で最も心配なのは心疾患で、その中でも心筋梗塞である。重症の場合はできるだけ早く検査をして心臓の塞がった血管を広げてあげなければ命の危険に直結する。これは心電図をとり、血管造影などを行うとわかるので問題ないと思われる。それ以外に大動脈など大きな血管が裂けたり、破裂したりすることもあるがこれも早く病院にいって検査をすればわかる。胸部の帯状疱疹のごく初期の場合は皮膚に変化がないためわかりにくいこともあるが、そのうち左右どちらか片方に水疱ができてくるので間違えることはない。これに対して原因のわからない胸痛に何年も悩まされる人がいて、あらゆる検査で異常を認めないのである。
 何時のころからかその原因について知ることができた。真幸先生から教えられたのか自分で見つけたのか記憶が定かでない。ヒントは背骨の棘突起に会った。その胸の痛みはふつう前胸部の上から肋骨弓の間のどこかに訴える。その痛みの胸の高さでで線をグルッと背中側に回したあたりの背骨の棘突起を指で押さえるか、腱反射を見るハンマーでたたいていくと特に痛みの強い突起を見つけることができる。胸痛はふつう右か左かどちらか一方に強いから、少し堅い台にうつぶせに寝かせ、その痛む棘突起を痛みとは反対側から痛む方に押し戻すつもりで手のひらで押し付ける。すると多くの場合パチンと音を立てたあと胸痛が一瞬のうちに消えている。全身の筋肉の緊張をぬいた状態で行なうことがコツである。
 胸椎の棘突起が何らかの機転で少し左右にずれたために反対側の肋間神経が引っ張られて神経痛を起こしていると考えたら説明がつく。そのずれを元に戻したとき棘突起がはねた音がパチンという音で、患者は自分の体の中から発する音だから自覚できる。
 これによってこのような胸痛が肋間神経痛で、胸椎の捻じれによっておこることが理解される。
 此の痛みのメカニズムはほとんど知られていないため、放置され、患者を悩ませている。ところが一瞬の整復操作を加えると痛みが瞬時に消える。知っておくと多くの人が楽になると思う。これは関心を持ち理解できる人の為に記録を残しておく。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ