砂糖中毒

 最近WHOで一日の砂糖の摂取量の基準値を15グラムにすることが報道された。15グラムというとお菓子一個食べるとおしまいの量であるとも云われている。砂糖の摂りすぎが、肥満や糖尿病につながる事が明らかになり、それらの疾患が急速に増えていることに危機感を感じているためと思われる。果たしてどれだけの医療関係者、さらには一般の人たちがその重要性に気を止めているだろうか。恐らくは少し砂糖を取り過ぎているから減らそうとは考えるものの、目の前にあるお菓子はさしあたり食べようと云うぐらいの受け止めかたで、そのうち忘れてしまって過剰な砂糖摂取を続けているのではないだろうか。
 以前、当院に勤務しておられた謝花先生が診察室に、砂糖のこわさというタイトルの二つのグラフを掲示してくれた。それによると一つのグラフは明治時代後期から戦後の復興にいたるまで期間の、砂糖の消費量が折れ線グラフで示されている。経済的に景気が良い戦前のある時は砂糖の消費量が増え日中戦争が始まり物資が不足する戦争中から戦争直後に砂糖の消費量は急激に落ち込み、更に戦後の復興に伴う経済の発展と共に消費量が急激に立ちあがっていく変化を示している。そしてもう一つのグラフが、砂糖の消費量の変化とまったく同じ変化を、三大成人病の死亡者率が後追いしていることを示すグラフで、砂糖消費量が成人病の死亡率と相関していることが一目でわかるようになっている。本当に恐ろしい話であること示す資料である。しかし頭で分っても、大人でも甘い砂糖の魅力の方が日常生活では勝ってしまっていることは、いつも実感する所である。ましてや将来を担う子供たちにはこのことが全く届いていないのではないかと思われる。
 本当の怖さはチョコレートの甘い粒を食べると、何時の間にかやめられない、止まらないという中毒に陥っていることにあると私は考える。おいしいのでお菓子を食べ続けているが、其の事を、社会通念として砂糖中毒という言葉で指摘する事はあまり聞かれない。砂糖を食べて社会生活がすぐ破壊されることもないからか、またはそれが重要な産業として経済を支える観点からも、それを大袈裟に取り挙げにくいのではないかと思われる。しかし、世界的には肥満の予防の為にその摂取量を明示し、米国では学校の自動販売機を撤去する事を義務付けるほどまでに事は深刻であることを示している。
 当院では最近、肥満の人のダイエット目的の来院が目立つようになった。当院の炭水化物制限によるダイエットで見違えるような効果をあげている人の話を聞いてみえるようである。
 その人たちの共通の症状は体がだるい、休んでも疲れがとれず、気分が落ち込むなどで、何となく浮腫んでいるような傾向がみられることである。それは砂糖の摂取が浮腫みにつながり、そのため体が余計に重く感じる事に因るらしいことを勉強会で北九州の先生が話しておられた。それによると砂糖1グラムにつき3グラムの水が余計に体にたまるという。まだ糖尿病になっていない人では、砂糖摂取による高血糖に対してインシュリンの血糖降下作用で結果的には低血糖の時間が長くなり、イライラや、体のだるさ、やる気のなさなど、鬱っぽい症状が引き起こされるのではないかと私は考えている。甘いものは口直しの水分摂取を伴い、それに塩分などミネラルが不足すると水の排泄が悪くなり、水毒で浮腫むと漢方では考えており、それを五行説では「脾・土が腎・水を剋す」、すなわち胃腸が腎の働きを抑制すると表現している。水を排泄し、身体を温め、活動のエネルギーを生むのが腎の働きであるから、脾の働きを支持する砂糖の取り過ぎは腎の働きを抑えるため、体が浮腫んで冷えて元気がでないという砂糖中毒の症状が起こってくると考えるのである。そしてそれが長期間続くと生活習慣病で糖尿病となり、合併症で腎臓や心蔵をやられて重症化し、医療費を押し上げるのである。
 又最近砂糖の取り過ぎで皮膚の痒い発疹を発生生じ、掻きむしって飛び火に成り、なかなか治らない人が外来に見える。皮膚科を転々としても砂糖が原因であると指摘されないので何年も治らずに苦しんでいる。砂糖の摂取を控えるように注意したら恨めしそうな顔をして睨んでいたが、次来た時には症状がかなり良くなったので納得してくれたのではないかと思う。皮膚のかゆみにも砂糖は悪い。
 同じようなことは炭水化物の過剰摂取でも起こるようで、そろそろ砂糖中毒、炭水化物中毒という言葉に市民権を与え、健康や生活習慣棒の予防に正面から取り組むべきではないかと考える。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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