梅雨時の過ごし方:湿をためない生活

 沖縄の梅雨時は実に不快である。気温が高いうえに湿度が高く、かいた汗が乾かずにべとべとになって気持ち悪い。人体は気温が高いときは汗をかいて、その汗を蒸発させ、その時奪われる気化熱によって体表面の温度を下げるような仕組みを備えている。湿度が高いと、その汗の蒸発がうまくいかないため、熱を発散しにくくなり、不快感となって表現される。このような環境で長時間仕事をすると気温が高い場合は体に熱がこもって熱中症になることもかんがえられるが、実際にはあまり遭遇することはない。
 日常的に起こることは湿度が高いと体表面からの水分の発散が微妙に低下するので、浮腫みが取れにくい、関節が腫れぼったい、体が重たい、頭が重い、頭痛などの症状が起こる。敏感な人は雨降り前の湿度が上がる時に症状を訴える場合もある。このような症状を起こしやすいタイプの体質を漢方では水毒体質と呼んでいる。
 また特に生理のある成人女性の場合は生理の周期に合わせてホルモンバランスの変化が起こるため、月経喘症候群すなわち生理前にイライラ、怒りっぽい、気分の落ち込み、頭重、頭痛、手足のむくみなどが起こり易い。湿度が高くなるとこれ等の症状が強くなることが日常臨床では珍しくない。生理前は黄体ホルモンが増え、浮腫みが起こる傾向があるため、水毒症状が其の時だけ出ると考えられる。特に頭痛持ちの人は生理前にそれがひどくなることはしばしばみられる。
 一般的に日本の夏は高温多湿であるから、水毒の漢方治療は特に重視されている。
 梅雨時は湿度が高くなるのでできるだけ湿度を下げる工夫が快適に過ごすコツである。手っ取り早い対応はクーラーで温度と湿度を適当に下げることである。幸いにも最近では冷房や除湿機などが普及して便利であるが、その時設定温度を下げ過ぎない事が大事である。体の冷えは汗を止めてしまうので熱が発散できずに逆効果になる場合や、冷え症ひどくなることがあるので注意する。
 食生活では甘い物や果物、炭水化物をたくさん摂り、冷たい水をよく飲む人に水毒が多いような印象を受ける。漢方では過剰な甘味の摂取は腎の働きすなわち水の排泄を妨げると考えている。従って甘い清涼飲料水や、スイーツ、果物の摂りすぎや、島マース、海藻などのミネラルの摂取不足が水の排泄を妨げるとされているので要注意である。また冷たいものはのむほどに内熱で口が渇くので、さらに冷たい水を欲しがり、悪循環を形成しやすい。冷たくて甘い物は最もその傾向が強くなるので特に水毒をきたし易いので要注意である。
 夏の食材である西瓜や瓜類は水の排泄をよくするとされるが体を冷やす作用もあるので食べ過ぎに注意である。最近ではクーラー、冷たい飲み物や食べ物で体を冷やしすぎる傾向が強いので、季節の野菜も本来の調節効果を発揮しにくいのではないかと考えている。
 適度な運動で血のめぐり、気のめぐりをよくすることが望ましいのであるが、特にストレッチなどで関節をよく動かすのがよい。関節には湿が溜りやすい傾向がある。最近はパソコンの普及で前かがみの姿勢を長時間続け、首に負担がかかり、首凝り、肩凝りから来る、頭痛の人が非常に多い。首への負担は頚椎の捻じれや直線化を引き起こし、自律神経失調の症状を起こしやすくなり、生理前の浮腫みも加わると、複雑な症状となり、外来を訪れる人が少なくない。クリニックでは専用の健康まくらで首の手入れをするように勧めており、好評である。
漢方薬は微妙な水分代謝について調節することができるので大いに助けになる。
 汗かきで特に下半身が浮腫み肥満傾向のある人は普段から防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)をのむとよい。色白で冷え症があり、生理前に浮腫む傾向のある人は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、生理前の頭痛は五苓散(ごれいさん)がよく効く。冷たい物を飲んだ時や、冷えた時に起こる頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)がよく効く。めまいや吐き気のある胃腸虚弱の人の頭痛は半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)。関節痛には薏苡仁湯(よくいにんとう)、冷え症で浮腫みのある人の関節痛や神経痛は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)にする。立ちくらみやめまいの人には苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)など、湿による症状の治療は、漢方薬の最も得意とする領域である。しかし、生活上の注意を守って飲まないと漢方薬も効果を発揮しにくいので要注意である。
プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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