気について

 気の話は漢方をやっていると避けて通れない。
 そもそも気とは何かということである。
 元気、先天の気というと親から遺伝的に受け継いだ素因を含めた生命力ともいうべきものであろう。また気・血・水の気とは身体の機能を支えているもので、それが体液、血液を動かし、あらゆる臓器の働きを調整している。つまり気とは眼に見えないが、その働きを通してその存在を仮定しないと具合の悪いものである。そこで漢方では身体の部位にはそれを動かす気がはたらいているとして色々部位に応じ、宗気、胃気、脾気、腎気などと名前をつけてある。それで一見複雑に見えるが、先天の気即ち持って生まれた生命力が身体のその部位の働きに応じて表現されていると考えれば混乱しないですむ。
 ちなみに漢方の気・血・水・気は、現代生理学的には自律神経の作用と考えればよいと考えている。さらに自律神経は意識・無意識など大脳皮質や大脳辺縁系などの高次機能の影響を受けるので中枢神経の働き全体を含めて考えたほうがいいように思う。
 身体の働きは現代生理学では神経・免疫・内分泌系の連動で調節されるという認識に到達している。これによって漢方的な気・血・水の働きがほぼ説明できると考えている。すなわち気は自律神経、水は内分泌即ちホルモンによる体液の調整、その中に血液循環、さらに白血球の働きに因る免疫も調節されると考えれば、漢方は現代生理学の範囲に有る事が了解されてくる。
 しかし気の中には現代生理学には含まれていない問題がある。気功、念力、テレパシー、超常現象などである。
 私が日常診療で実施している針治療や鎖骨・骨盤調整などもその効果が瞬時に起こることから念力や気功に通じる部分もあるように見えるが、解剖生理学的には骨格の位置の矯正による神経機能の回復というように説明できることから超常現象というものでもないと考えている。しかしそのからくりを知らない人から見ると神秘的な効果に見えるかも知れない。この場合骨格の歪みの矯正を、手を介した直達的な力によって行なうから、特別な現象とは考えていない。ところがこれを、手をふれずに気合や念力、外気功などによって行なうと常識的な現象とは言えない。さらにこのような治療は治療者の能力によって効果のある場合と効果がない場合とがあり、医療行為としておこなった場合、効果が一定でないため現場は混乱し、また再現性も確かでない場合は科学の対象になりにくいので学会から敬遠されている。
 ところで世の中には眼に見えなくても物理的に作用する力はめずらしくない。テレビやクーラーをつけるリモコンのスイッチはその代表である。電気エネルギーを変換して電波を送るとスイッチが入ったり切れたりするが、誰もそれに超常現象であると言う人はいない。その電波で小惑星イトカワに接近したハヤブサが、辛うじて残っていたイオンエンジンを使って、宇宙の彼方から地球にもどってきた。しかし人間の場合、神経の働きは電気的な活動として生理学的に理解されているものの、見えないエネルギー即ち念力を発するとなると人によってできたり、出来なかったり、その評価がはっきりしないものだから学問としては認めにくいようである。それを漢方の古典では鬼神を操ると表現している。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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