生理と漢方2

 外来患者さんで男女比を見ると圧倒的に女性が多い。女性は生物学的に男性よりも生理的変化が激しく、初潮、妊娠、出産、閉経と大きくホルモン環境が変化するし、月経が始まると平均28日周期で排卵と月経を繰返す。それは女性が妊娠、出産により子孫を残すための主要な役割を担うために身体の仕組みが寄り複雑になっていることの結果である。また生理の周期を見るだけでもホルモンはドラマチックに変化する。すなわち月経が起こっての後、排卵が起こるまでは卵巣では卵包刺激ホルモンにより卵包が成熟し、排卵が起こると卵胞は黄体に変わり黄体ホルモンを分泌し、子宮内膜を発育させ、受精卵の着床に備える。受精が起こらないと子宮内膜は受精卵を育てる必要がないのではがれ落ちて経血となり、次の妊娠に備える。これを閉経まで規則正しく続けている。その間生理周期に伴ってさまざまな症状が出てくることがある。排卵が起こると黄体ホルモンの作用で同化作用が盛んになり体重が増えやすくなり、人によっては生理一週間前ごろから浮腫みが出てくる。乳房が張ってくる。それから精神的に不安定になり、怒りっぽくなったり、落ち込んだりして仕事もできないほどになる人もいる。また激しい頭痛に襲われる人もいる。また生理が始まると激しい腹痛すなわち生理痛が起こること普通に見られる。ホルモンの変化は本人の意識とは関係のないところで起こるので、症状が強い場合には本人も周りの人も戸惑う事が少なくない。特に男性にそばにいる女性に何が起こっているかわからないので気の毒な場合がある。
 私は婦人科の専門ではないが、漢方薬が生理に伴う種々の症状に極めて効果がある場合が多いので、女性の患者さんに漢方薬を処方する機会が多い。
 まず最もよく使う機会が多いのは生理痛で当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を使う。色白で何となく貧血ぎみで少しむくんだ感じの女性に使う。それだけでよくならない冷え症の強い場合に安中散(あんちゅうさん)を併用すると効く場合がある。それでも生理痛が起こる場合に頓服で芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を使うとよい。当帰芍薬散以外に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を使うこともある。
 生理前になると気分的に落ち着かなかったり、落ち込んだり、怒りっぽくなったりする状態は月経前症候群と呼ばれる。この場合のぼせてホットフラッシュなどを起こす場合に加味逍遥散(かみしょうようさん)を使う。いらいらや不安があるのにそれを外に出さずに、内にこもる傾向のある人には抑肝散(よくかんさん)を使う。咽が使える場合に半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を併用する場合もある。さらに生理前に多い症状は頭痛である。生理前はホルモンのバランスのため浮腫む傾向があるので、水毒にたいして五苓散(ごれいさん)を使うと頭痛が非常によくなる。また普段から当帰芍薬散には浮腫みを採る作用もあるので普段から飲んでいると頭痛も起りにくくなるのではないかと考えている。生理前に気分が落ち込んで体がだるい時には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)にする。
 毎月の生理周期に因る変化が激しい時に加味逍遥散を使う機会が多いように、人生のホルモンバランスが不安定になるのが更年期障害でそのときも加味逍遥散や抑肝散を使う機会が多いのは非常に興味深い。
 人体は神経・免疫・内分泌が連動するように調節維持されているから内分泌すなわちホルモンバランスが不安定になると自律神経にも影響し、眩暈、動悸、胃もたれ、ゲップなど自律神経の症状を伴い多彩な症状を呈するようになる。そのような状態に対しても漢方薬はきめ細かく対応できるところに強みがある。更に頚椎の捩れは自律神経過敏の症状を伴ってくるので漢方薬とあわせた針治療や頚椎の治療を行なうと更に速やかな改善を見ることができる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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