改めて漢方的に睡眠を考える

 睡眠が大切であることは誰もが身にしみて感じていることである。それでもあえて睡眠を取り上げて、その意味を漢方的な立場から考えてみた。
 昼は働き夜はゆっくり休むというのは人間の一般的な生活パターンである。何故休まなければいけないのだろうか。昼間は生活の糧を得るために身体を動かし働かなければならない。生活の糧とは生きて働くためつまり異化作用のエネルギー源となる食料である。食料を摂取して身体がそれをエネルギーとして生成し、身体の各部所のニーズにこたえるためには、労働を控え、エネルギー生成工場を動かす、つまり同化作用をしなければならないということだと考えられる。
 言うまでもなく地球の自転によって昼夜のリズムは形成され、公転による四季の変化で昼夜の長さが変化している。地球に生命が誕生した頃にはすでにこのリズムは形成されていたと考えられる。すると地球の歴史の最後に出現した人類はこの昼夜のリズムと四季の変化のリズムを体内に取り込んでいたに違いない。昼間は交感神経が興奮して代謝が高まり、エネルギーを消費し、食料を確保し、身を守る異化作用が主となり、夜は食事をしてゆっくり休む同化作用に切り替わる。昼の長さは夏至が最大となり、冬至は最短となる。すると夏は活動の時間は長く、冬は短くなる。昼夜の長さの周期的変化がそのまま自律神経の経年変化の基本的なリズムになったことと考える。そのリズムは人類が火を手に入れて少しずつ変わっていった。つまり夜、火を灯すことによって人間の活動の時間が少しずつ延びていく。人類の歴史における効率のいい燃料の開発はどんどん夜の時間を短くしていった。電気の発見、電燈の発明により一晩中でも活動できるようになってきたのが現代の状況である。一晩中人間が活動するようになると睡眠と活動のリズムが壊れてくるのは必然である。特に経済効率優先になると雇用主は働くだけ働いてもらおうと思うし、労働者は稼ぐために体力の続く限り夜でも働こうとする。すると身体を休め、エネルギーを蓄積する時間がなくなり、交感神経が興奮しっぱなしという状態になる。身体はエンジンがかかりっぱなしであるから常に熱を発生し、遂には自然の眠りすら起りにくくなって、疲れているのに眠れないという厳しい状況になる。これが不眠症である。
 このとき身体は末梢血では好中球が増えて炎症反応を起こしやすい状態になり、ちょっとした刺激が原因不明の炎症に繋がっていく。わけのわからない自己免疫疾患や、自律神経失調症、わけのわからない皮膚病、不眠に端を発するうつ病などが現代に増えてきた原因のひとつはそのあたりにあるのではないかと思われる。
 このように見ると、文明の発達は人体の交感神経優位の時間を増やすように変化しており、それが種々の調節障害を起こしてくることを考慮するなら、睡眠時間の重要性を再認識する必要があるのではないかと考える。ストレス過労も交感神経の興奮をもたらす。また老化も体液の減少から相対的に交感神経の興奮をもたらし同じよう病態を示すと考えれば、睡眠不足、ストレス、過労は老化の病体を早めることが理解される。質のよい睡眠こそは健康の基本であることが理解されてくる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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