耐用年数

 先日カメラのシャッターが切れず修理に出した。以前は電子部品が少ないアナログのカメラであったが、最近のはデジカメで電子部品の塊のようなものであるから、耐用年数も限られているようである。基盤に問題があるとかで交換するのに高額の修理代を必要とした。業務用のパソコンなど5年も過ぎると買い替えの話が出るのでカメラもこんなものかなと思うのである。
 さて件(くだん)のカメラはやはり5年は過ぎていた。しかし、高価なカメラなので電子部品の寿命5年で買い換えるのはもったいない気がする。経済的に消費を上げるには消耗してどんどん新品を買ってもらうほうがいいのであろうが、一方では旧い物を保守点検し長持ちさせる喜びもある。使いこなして黒光りする道具に愛着を持つこともある。また文化財や美術品などのようにいいものをいつまでもいい状態で維持しなければならない価値観もある。しかし、電子機器は日進月歩で性能が向上していくので、古いものを大事にする考えになじまないようにも思える。すると相反する価値観を同居させながら此の社会は進まなければならないようだ。
 ソフトの面で言えば沖縄の各村々には旧い祭りがあった。村単位で人生の大部分を過ごす社会の仕組みが機能していた数十年前は、旧い祭りが村の存続に大きな役割を果たしていた。ところが若い人が現代社会で行きぬくためにどんどん外の社会に出て、村だけで社会が完結しなくなると、祭りのあり様も次第に変化するのが時の流れと思われる。しかし旧い行事は文化財として残す必要もあるので、形は昔の状態のまま継承しなければならない。そこにも古い文化を残すことと、現実の社会で生き延びるという、相反する二つの対応が必要になり興味深い。
 さて人体のことになるが、人体の耐用年数はどれくらいだろうか。健康寿命でいうと平均余命から10年引いたくらいだろうか。正確な数字はわからない。とにかく限られた耐用年数を生きなければならない。とくに生産年齢を過ぎ、更年期を過ぎると身体はあちこち故障を起こして不具合を生じる。食事に起因する不具合は栄養の取りすぎで、全身に脂肪がたまり血管の老化を早め、循環障害を起こしてくる。身体を動かす仕事であれば、特定の部位を酷使するため部分的に故障が起こってくる。相撲取りは負担のかかる足腰の故障が多い。また限られた範囲で関節を動かすような仕事の場合は、姿勢が偏って背骨や骨盤が歪んでくる。動かない骨には余分なカルシウムが沈着して変形が起こり、動く範囲、すなわち可動域が狭くなってくる。機械でいえば錆でジョイントの動きが悪くなったような状態である。このように機械と同じように人体も年をとってくると部品、組織の劣化がかさなり、日常何かと不具合が生じてくる。変形性股関節症や、膝関節症などでは人工関節置換術という手術で部品を取り替えることも可能ではある。しかし劣化が全身に及ぶと部品交換にも限界がある。そして遂には死に至る。人間の耐用年数を健康寿命という。
 また身体と同様、見えない心にも年と共にさびが生じ、記憶力が衰え、回転が鈍くなって融通が利かなくなってくる。心の錆、歪みは常に好奇心を持って新しい情報に接することにより脳を刺激し、瞑想により溜まった心の垢であるこだわりや悪い感情を掃除して心の働きをいい状態で維持することができると考える。
 このように身体の歪や錆はラジオ体操やストレッチ、生活習慣の修正で予防するが、それでもいつかは寿命が尽きるというのが現実、人生と思う。
 自分の人生がいよいよ終わるとき何を思うのか、悔いは残らないかと常に自分に問いかけながら日々を過ごし、今やるべきことをやれば気持ちもそれなりに安らぐと考えている。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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