薬の効果と病気の治癒

 外来通院による治療をしているとき患者さんが急に治療に来られなくなって戸惑うことがある。ところが、しばらくして又同じような症状を訴えて見える。そこに少し患者さんに誤解があるかもしれないと考え、薬が効くことと、病気が治ることの違いについて整理してみた。
 ある訴えに対して、それに対応した漢方処方が効くかどうかは比較的短期間に評価できる。例えば風邪の初期症状であれば一服か二服の漢方薬で治ってしまう。腸炎であれば一服の漢方薬で腹の具合がよくなり効いていることがわかる。これは急性の病気の場合であるが、慢性の病気でも漢方薬の効果は一週間も飲めばある程度わかるのではないかとこれまでの経験で感じている。つまり、漢方薬の処方内容が適切であれば、比較的短期間に症状はある程度改善し効果の手応えが感じられる。
 ところがここで強調したいことは漢方薬が効いていることと病気が治ることは意味が違うという当たり前のことである。漢方薬が現在の症状に有効であるということは、漢方処方の内容がその人の病気に対して改善の方向で的確に作用しているということである。すると不快な症状は軽減するか、消失する場合もあるが、特に慢性の病気つまり発症から時間のたった病気では、症状が軽減しても必ずしも治ってはいないのである。急性病の代表である風邪であれば一、二服で完治することもあるが、こじれた風邪は咳や、だるさ、微熱、食欲低下などの微妙な症状がとれるのに1、2週間かかるのが普通である。更に喘息や更年期障害、不安神経症など経過の長い根の深い病気の症状は、完治するのに年単位の時間がかかる。慢性の皮膚疾患などもそうである。
 一般的には治るのに必要な時間は、発症して現在に至るまでの時間が必要といわれており、そのように考えたほうが病気を完治させるのには都合がいいような感じがする。従って漢方薬を飲み始めて症状が軽くなったからといって勝手に薬をやめてほしくないのである。薬の力で症状改善のほうに向かっているので、薬を中断すると直ぐに元にもどっていくからである。
 治療するほうとしては、せっかく薬が合って効いているのに何で中断するのかと疑問に思うのであるが、日々の生活に追われていると、少し楽になれば通院に時間をとられたくないというのが本音であることは理解できないわけではない。しかし薬が効くということと病気が治るということには時間的なずれがあるので、面倒な病気ほどしっかりと漢方薬の内服を続けて欲しいのである。十分に治っていない状態で治療を中断すると簡単に元の悪い状態に戻り、また最初から治療をやり直さないといけないわけで、経済的にも時間的にも反って負担が大きくなるのが落ちである。急がば回れ。じっくり治療してほしいものである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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