梅雨時の漢方

 今年の沖縄は梅雨入りが九日ほど早く、ゴールデンウィークにはすでに入梅していた。連休明けに外来に来られた方で気になったのは、最近気分が悪くなったと訴える人がときどきおられたことである。梅雨の天候が影響しているようなのである。
 梅雨の時期に漢方的に問題になるのは湿度である。また気温の高い沖縄では湿度と高温が同時に作用してくる。両方を併せると湿熱つまり湿気と高温があわさった負担がかかってくる。湿熱は人体にどのような影響を及ぼすのか考えてみた。
 まず湿度が高いと蒸し蒸しと肌が汗ばんで爽やかさがなく不快感が増す。不快指数の基準が湿度にある所以である。また温度が高いとき体温を維持するのに、汗をかいて体表からの汗が気化熱を奪って蒸発し、体温を冷すことで調整される。ところが湿度が高いと汗が何時までもじめじめと蒸発せずに皮膚にとどまり、熱が除かれないため気持ち悪くなることは容易に理解できよう。そんなとき入梅の前の湿度の低いときの爽やかさが思いだされる。さらにその不快感に伴う別の症状を訴える人達がいる。体が重く、頭が締め付けられるように痛み、節々が痛い、食欲がなく、身体がだるいなどの症状を訴えるのである。これは湿度の高いときに身体の表面からの水の排泄が効果的に行われない時に起こる症状で、このような症状を現す人を漢方では水毒体質と呼んでいる。すなわち普段必要以上に水分を取りすぎて余分な水が溜まっている人である。汗や尿に余分な水を排泄して身体の水のバランスを何とかかろうじて維持していたのが、梅雨の湿度で汗による皮膚からの水分排泄の効率が悪くなるために上記のような症状が出てくるのである。つまり頭皮からの発汗が悪いと頭が重く、締め付けられるような感じがして、ひどいときは頭痛になる。手足の浮腫みがある場合には手の強ばりや、関節痛が加わってくる。全身的なむくみの場合は体が重く、動くのが億劫になり、息切れがするなどの症状もでる。
 また気温が高いと、汗による体温調節を行うため体表面の血流が増えてくる。そのため相対的に胃腸の血流が減り、特に胃腸の弱い人は胃腸の働きも落ちて食欲も落ちてくると考えられる。
 水毒体質にならないためには普段から水を飲みすぎないことである。あまり汗をかかないような生活であれば食事以外の水分の量は1リットルぐらいでもいいのではないかと考える。水を飲みすぎない注意が必要である。
 水毒に対して漢方薬では五苓散を使う。五苓散は血管外の水すなわち浮腫みを血管内に引き込み、循環血流量を増やす結果腎血流も増え、余分な水は効率よく尿に排泄される結果、急速に尿量が増えて頭痛や、むくみ、身体の重いなどの症状などが取れてくる。
 水はたくさん飲むほどよいという考え方は改めるべきであるということが梅雨になるとはっきりしてくる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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