人生が明るくなる

 肩こり、頭重、頭痛、首の痛みは比較的多くみられる珍しくない症状である。あまり激しくない症状であれば多くの人が経験しているポピュラーな症状である。ところが特別なタイプの肩こり、首筋の凝りでなければこれらの症状は原因もはっきりしないうえに治療法もはっきりしたものがないのが現状である。少なくとも私が学生であった頃の医学部では肩こりのメカニズムと治療法について習った記憶が無い。ところが外来に見える不定愁訴に悩む人は多くの場合肩こり、首筋の凝りなどの症状を伴っている。さらにストレスで鬱状態にある人たちも鬱の症状が深刻で前面に出ているが、背景にはこれらの肉体的な症状があるようなのである。
 当院では肩こりや、首筋の痛み、頭重があるときには必ず頸椎をチェックすることにしている。後頭部と首の付け根の辺りを親指で敲くと左右差があることを頸椎の捩れの指標にしている。上半身に何らかの症状を訴える場合、ほとんどの人に左右差を認める。つまり上半身の不定愁訴を持つ人は頸椎の異常を伴っているのである。ただしこれらの微妙な変化は症状との関連が確立されていないため、現代医学の教科書には記載されていない。従って整形外科的診療でも見逃されているのではないかと思う。ところが操体法、整体やカイロプラクティック等、非主流の医療では肩こり、頚部痛、頭痛等の症状が頸椎の歪みと関連していることは自明のこととして認識されている。
 このようなわけで頭部を中心とした不定愁訴の患者に対して、当院では鍼灸治療を行ない、全体の筋肉をほぐしてリラックス状態にした後、頸椎のねじれを戻す鎖骨調整をおこなうのである。すると施術後、瞬時に肩こりや頭が重い等の症状がとれ、肩の荷を降ろしたような感じになる。さらにそのとき、同時に眼がすっきりした、周囲が明るくなったという言葉が返ってくる。そのときすかさず『これであなたの人生も明るくなります、人生が明るくなるとはこういうことです』と付け加え、笑いを誘うようにしている。
 不定愁訴に伴う肩こりなどに漢方治療を行なうと体が楽になり、肩こりなども気づかないうちに治っていたというのが一般的な経過である。すると漢方薬は体のバランスを整え、背骨の歪みも治す効果があるのではないかと推測されるが、実際にそれが確認されたという話を聞かない。ただ漢方治療の場合は一定期間内服を続ける必要があり、整体や針治療のように即効性というわけにはいかないので、二つの治療法を併用することで最大限の効果を発揮するように工夫している。
 このように人体を眺めていると現代社会で増えている精神的ストレスは頸椎や骨盤の歪みとして蓄えられ、一定以上に歪みがたまると肩こり、頭重、目がすっきりしない、何となく体がだるい等の身体症状に置き換わるのではないかと考える。
 『心身一如』、『心におこったことは必ず身体に影響をおよぼす』という先人の叡智を現在の治療現場において確認すれば先のようなことになるのではないかと思うのである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

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