この季節にクリニックで起こっていること

 そろそろ風向きが北に変わり、冬型の天気図になることも時々見られるようになった。それでも最高気温が25度を越しており、昼間は暑いが、朝夕は22から23度で湿度も低く爽やかである。明らかに夏とは違い微妙に冬の気配が感じられる。
 このような気候の変化で人体に何が起こるか興味深いところである。クリニックを訪れる患者さんの訴えにそれが現れている。
 アトピーで漢方治療を行なう当院では意外にも痒みを訴える患者さんが多い。夏の間は湿度と気温が高く痒みを訴えていた湿疹の人は皮膚の具合が落ち着いて喜んでいる。この場合気温と湿度が下がることが皮膚にとって刺激が少ないことがわかる。これは気候の変化によるものであるから、来年、夏の天気に変わる頃悪くならないために治療を続けるように念を押している。
 これとは逆にお年寄りなどでは最近皮膚が痒くなったといって見える。逆に低い湿度で皮膚の乾燥がひどくなり痒みが増しているので、保湿剤や皮膚に潤いを与える漢方薬を処方することなる。
 また気温や湿度の変化に敏感なのが呼吸器である。冷え症の人は鼻炎の具合が悪くなる。夏の間は気温が高いので体温と外気の温度差、湿度差が少ないため、空気の通る鼻やのど、気管支へ空気の刺激が少ない。ところが最近は北風の冷たい乾燥した空気に気道は即座に反応してくしゃみや鼻水がひどくなる。特に冷え症である上に夏の間冷たい物で腹を冷やした人たちは外気の変化に敏感に反応してくる。ちょうど具合の悪いことに今は梨や柿、蜜柑など腹を冷やす果物が豊富に出回る時期で気候の変化に加えて食べ物も冷えの症状を悪くするので要注意である。
 最近眼がかゆくてこまるという子どもたちがきた。アレルギー性結膜炎に眼科で点眼薬をもらうのだがよくならないという。鼻炎を合併していることが多いので、冷えから来た眼の痒みと考えて麻黄附子細辛湯などを処方するとすぐよくなる。季節は眼の症状にも影響している。しかも身体の冷えと結膜の痒みが関係しているとは西洋医学では思いもよらないことではないだろうか。
 さらに冷え症のひどい場合には腹まで冷えてくる。するとお腹が張ってガスがたまって痛みを訴える。更にひどい場合には軟便、下痢になる。腹を温める大建中湯や真武湯が必要になる。
 また冷えによって神経痛が出てくる。手の関節が冷えて痛むというので関節を温める桂枝加朮附湯を処方する機会も目に付きだした。
 このように冷え症の人を診ていると人体は微妙な気候の変化に対応してからだの機能を調整し健康を維持していることが最近の外来診療でよくわかる。しかし健康で何事もおこっていない人にとって季節の身体への影響はわかりにくいのではないかと思う。
プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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