運動時の水分補給について

  運動時は熱産生が亢進する。すると身体が熱く口もかわくので勢い水分補給は氷水になる。多くの運動の現場では氷の入った飲料水が置かれているようであり、私の中学の頃もバレーボールの部活で氷水を飲んだ。すると現場は40年来変わっていないようである。漢方的な見方からするとこれは非常にまずいことであると思う。
  運動時身体は熱くなる。従って冷たい飲み物を欲しがるのは人情である。ところが身体は体温を下げるために皮膚の血流を増やし、盛んに汗腺から汗を分泌している。すると内臓の血流は相対的に減少しており、胃腸はほとんど機能しない程度に血流は減っているはずである。これは運動時の交感神経の興奮により消化管の運動が抑制されていることと連動している。そこに冷たい飲み物を入れるとどうなるだろうか。胃は冷やされ、胃の消化吸収の働きは更に低下する。更に冷たい飲み物を詰め込むと胃は氷水をつめた袋になり、腹を冷やすことになる。からだは冷えを感じ汗は止まってしまう。すると更に身体は熱く感じるはずである。当然胃腸の水は吸収は悪くなる。冷えた胃は温まることを求めるので手足の血液は緊急避難的に胃に集中する。すると筋肉の血流は減ってくるので運動能力は低下し、悪ければ痙攣を起こしてくると推測され、悪循環を形成する。
  ではどうすればいいのだろうか。まず運動時の飲み物は温かいものにして少しずつ補給する。一度にそんなにたくさんは飲めないので胃の負担が軽くなり、吸収もよくなるだろう。すると効果的な水分補給になると考えられる。胃もたれがある人は水の吸収が悪いので五苓散をあらかじめ飲めばよい。水の吸収がよくなり、水が全身に運ばれるので水分補給が効果的になるのではないかと考えている。
  先日那覇マラソンに出た後から腹の具合が悪く、身体が冷えるという女性の方が見えた。マラソンの途中から胃の具合が悪く戻したという。手足は冷たく脈は触れにくい。胃に水がたまったポチャポチャという音が聞こえる。完走したというから本来元気な人であることは間違いない。そこで走りながら冷たい水をたくさん飲んだでしょうと聞いたら、そうだという。胃が冷えて水は吸収されないでたまって嘔吐したと考えられると伝えた。ほとんど尿は出ていないのではないかと聞くとそのとおりであった。そこで五苓散と手足の冷えに効く当帰四逆化呉茱萸湯を処方したところ、次回の外来では手足は温かく、胃の具合もよくなっていた。
  マラソンのときは温かいものを少しずつ補給したほうがいいですよといって納得してもらった。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

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