五苓散の話

  五苓散は面白い薬です。臨床的には口が渇いて水を摂取しても胃腸から吸収されずに胃腸にとどまり、突然吐いたり、下痢したりして尿の出が少ないときに使います。頭痛、めまいが起こることもあります。五苓散を飲むと、口渇が解消され尿が出るようになります。
  このような症状は暑い夏に冷たいものをたくさん飲んだときに起こるようです。胃腸が冷えていて水が吸収されずにポチャポチャとたまっているときの状態です。身体の中に水はたくさんあるのに効果的に利用されないため、脱水の状態が解消されないようです。これを専門的には血管内脱水といいます。身体はむくんでいても水が血管内に吸収されないため、水不足の脱水の状態と変らず、尿も出ないし、口の渇きを感じるのです。そこで一生懸命水分を補給しても胃腸から吸収されないので渇きは解消されません。
  そこで五苓散を飲むと胃腸や血管外の浮腫みになった水分が血管の中に吸収され、循環血液量が増え、全身に水が配られ口渇が解消し、尿も出るようになり、気分もよくなるのではないかと思われます。
  血管外の浮腫を血管内に引き込む効果は別の形で威力を発揮します。人工透析中に血圧が下がり十分に血液が浄化できないという方がこられました。人工透析による血液の浄化は血管の中を巡る血液について行なわれます。浮腫みとして血管の外にある体液については血管の中に引き込まれない限りは手付かずになります。また透析の機械を回すためにはその回路の分だけ余計に血液の量が必要になります。血管外から血漿の移動がなければ血圧が下がってしまうことになります。自力でこのような場合の血圧の調整ができる人はいいのですができない場合は非常に困るようです。また青森の漢方の勉強会では脳出血を起こした方の透析に五苓散を使った話が出ました。透析を始めるときいつも血圧が下がり、意識低下や痙攣を起こしていた患者さんで、透析の前に五苓散をのませると意識低下や痙攣が起こらなくなったということでした。
  漢方薬のこのような働きが透析に生かされれば患者さんの苦痛が軽減され、すばらしいと思います。更に欲をいえば腎不全にならないような工夫、予防が早い時期にスタートし透析に至らないですむことが最も望ましいことにちがいありません。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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