熱中症について

  今年の夏は全国的に暑く、35度を越すことはざらで40度を越すことも見られるようになった。75年ぶりの最高気温の更新だそうである。それに伴って熱中症による死亡者が例年になく多いようである。しかも80歳前後のお年寄りが大部分である。これを漢方的に考えてみた。
  漢方の原点ともいうべき古典に傷寒論がある。字の如く寒に傷つけられることを論じている。恒温動物である人体は多くの場合、体温より低い外気温に抗して体温を維持しなければならない。すなわち冷えないようにしなければならないのである。一番わかりやすいのが風邪である。身体を冷やして風邪をひく。これとまったく逆の現象が熱中症である。体温に近い外気温によって体温が上がってしまい、下げることができずに死んでしまうのである。
  人体は体温を下げるために汗をかく。高温多湿になると不感蒸泄あるいは発汗による気化熱による皮膚の温度調節が効果的に行なわれないために体温が上がってしまう。その前に体温が上がると自動的に発汗によって体温を下げようとする調節機構が働くため大量に汗をかき脱水になりやすい。従って身体の水分量の少ない老人は高温に対する調節能力が低くなり、最も影響を受けやすいことになる。また高温で汗をかくような環境で肉体労働する人や運動をして大量に汗をかく場合は若い人でも特に注意が必要であることは高校生や作業現場の死亡例を見るとわかる。すなわち頻回に水分、ミネラルを補給する必要がある。
  このような病態を漢方では傷寒に対して温病とよぶ。温病の考え方は中国ではかなり後代になって出てきたが、おそらく現在のように高温の夏が続くような天候の変化で体調を崩す人が多かったためと思われる。
  高温の環境でまず皮膚温が上がるので汗をかく。そのとき汗をだしながら皮膚を冷やす治癒機転が働く点で風邪の場合と違う。風邪の場合は冷えたために皮膚を温めなければならない。そして十分温まったらその結果汗をかいて解熱する。これに対して熱中症のような温病では体温を下げるために積極的に汗をかかなければならないという微妙な違いがある。すなわち汗をだして皮膚を冷やさなければならない。この発汗過多の状態がすすむと当然脱水が進行するので皮膚はかさかさになり、口はパリパリに渇き、発汗によって体温を下げることができないので高体温になるし、血液もドロドロになっていく。脳の温度も上がり意識が朦朧となり、尿も出なくなる。このようなときに使う漢方薬は白虎加人参湯や大承気湯である。ちなみに水は天然の白虎湯とよばれるように水分の補給が重要である。
  熱中症ので大事なことは涼しい環境に移動することと水分とミネラルの補給で脱水にならないように予防を心がけることである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

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