水の問題

  水は生命の源であることはいうまでもないことである。ところが水の健康にたいする微妙な問題になると案外に知らないことが多いのである。例えば一日に必要な水の量はどれだけか。体の大きさ、運動量、年齢などによっても違う。だからある程度の幅を持っていることはわかる。成人の安静時の不感蒸泄量が約1000mlとする。尿量を700mlとすると汗と尿で一日1.7Lの水を排泄する。代謝によって生まれる水の量が250mlとする。一回の食事で薬400mlの水分を取ると三回分で1200ml、すると水として別に摂取する分は1700ml-1450ml=250mlとなる。安静時の単純計算であるとしても最低必要な水分のみの摂取量が少ないことがわかる。もちろん運動で汗をかくとその分摂取量を増やさなくてはならない。それでも一般の生活で食事以外の水分摂取2lは多すぎるのではないかというのが日常診療で感じる疑問である。
  水は生命維持に不可欠である。しかし飲みすぎると身体に負担をかけてしまう。適切な量をとることが大事である。植物では水が多すぎると水腐れで死んでしまうように、人間では水毒の状態になる。少し動くだけで汗をかき、息切れ動悸がして体が重く、階段を上るのに途中で休みたくなる。皮膚はいつも湿って、余分な水が皮膚から染み出しているような感じになる。たいしたこともしていないのに体が重だるく本調子じゃないと感じる。この段階で西洋医学的に軽い浮腫以外には特に異常は見られない。
  われわれは意識せずに汗をかいたり、おしっこをしたりしているが、水を排泄するのもエネルギーが必要で、多すぎる余分な水を排泄するのにはより多くのエネルギーを要する。したがってエネルギー不足の状態では水の排泄が十分でなく、体が重く疲れるのではないかと考える。
  激しい運動をし、高温の環境で長時間働く場合にはミネラルと水分の十分な補給が不可欠であるが、普通の生活ではせいぜい水分として食事以外に1Lもとれば十分ではないかと考えられる。
  漢方は水の排泄を調節して自然治癒力を高める医学である。したがって汗や尿の排泄を促して余分な水を除くことにすぐれている。しかし大事なことはまず生活の軌道修正、水を飲みすぎないことである。特に冷たい水、もっと悪いのは氷水のがぶ飲みは身体に負担をかけ、長期にわたると身体に変調をきたしてくる。
  スポーツで身体を鍛えているのに元気がない子供たちを見かけることがある。例外なく暑いので冷たい水飲んでいる。身体を動かすと四肢筋肉に血流がシフトするので胃腸の血流は相対的に減少する。つまり胃は冷えているのである。そこで冷たい水でさらに胃を冷やすと水分は吸収されずに胃に溜まってしまう。結果的に水分の補給にならない。体温に近い温度の水を少量ずつこまめに補給することが効果的ではないかと思う。
  このように生存に不可欠の水も不適切に摂ると微妙に健康に影響してくる。漢方薬には水の排泄を微調整する薬があるので助かる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

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