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漢方エキス剤の効果は75パーセント

 漢方エキス剤の効果は煎じ薬の75パーセントということを耳にする。漢方のエキス剤は煎じ薬よりは効果が落ちるという意味である。漢方の勉強を始めたときからエキス剤の効果が弱いと聞かされていたので、効かなかったらどうしようということは常に気になっていた。
 いま改めてそのことを考えてみると、それでもいいと今は思えるようになってきた。
 例えばアレルギー性鼻炎である。エキス剤で小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を処方する。それで効かない場合は、見立てを誤っているか、薬の効果が弱いかということになる。勉強し始めの頃は経験が少ないので見立てが誤っているだろうと考え、別の処方に変える傾向にあった。長年勉強を続け、経験を積んでくると処方は合っているのに薬の効果が弱いせいであると考えられるようになった。ところでさらにもう一つの可能性は本人の不摂生を考える。つまり本来薬が効くべきであるのに薬が効かないのは本人が薬の効果を打ち消すような生活をしているのではないかと考えるのである。
 そのような観点から見ると西洋薬の抗ヒスタミン剤などは非常に強力で、体が冷えて起こる鼻水、鼻づまり、くしゃみなど鼻炎の症状にもよく効くのである。ところが内服をやめるとそっくり元の症状がでてくるので、治っていない。つまり対症療法であることがわかるのである。
 漢方薬も使い方では対症療法になる。つまり気道を温める効果のある漢方薬で鼻炎の症状が改善するのであるが、抗ヒスタミン剤とは一つ違いがある。それは、漢方処方は病気の成り立ちに対応して組み立てられているので、その構造は病気の原因を教えているという点である。すると鼻炎の漢方薬は気道を温める仕組みになっているので、薬の効果を上げるために体を冷やさないように気を付けるという生活指導、養生が加わらなければならない。それによって病気を根治させ、予防することになる。
 つまり、養生をしっかり行えば、エキス剤でも十分使用に耐えると考えるようになった。若し必要であれば投与量を増やせばよいと考えられるようになった。逆に効果の強い煎じ薬も的確な養生を伴わないと対症療法になってしまうことが理解される。
 漢方における病気の考え方の特徴は、病気の成り立ちが日常生活の生活習慣や環境の中にあり、それが体の平衡バランスを崩して病的過程に移行していくことを示していることにある。それを理解すれば少し効果が弱いとされるエキス剤でも大方対応できると考える。むしろ効果が弱い場合、効果を引き出すため的確な生活指導を行わなければならない分、漢方に対するより深い理解がもとめられるのではないかと考える。大事なことは病気の成り立ちをよく理解し、その前に的確な生活指導を行うことである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

平成三十一年 新年の挨拶

 新年あけましておめでとうございます。
 漢方は共感の医学であると私は常々考えてきました。それは漢方の成り立ちによると考えます。漢方の古典「傷寒論」そのものが寒冷刺激により体温の自動調節が破綻した結果起こる発熱疾患をモデルとして、その症状の変化に対する治療を論じており、それらの症状は医者も患者と体感を共有できます。さらに内因(七情)すなわち・不内外因(過労・食事の不摂生)に範囲を広げてみると七情における感情の乱れ(喜・怒・悲・思・憂・驚・恐)、冷飲食、過労、睡眠不足などが病因となる病的過程は、医師も人の子、お互いの経験から実感を共有し共感できます。すなわち漢方の診療は病気の過程における症状を医師が患者と同じように日常生活から理解、共感し、診断・治療に結びつける仕組みになっております。そこに漢方の根強い人気の理由があるのではないかと考えます。
 ところで最近これまで共感してきたつもりが、必ずしも共感できていなかったと反省する領域があることに気づかされました。腎虚(加齢)の問題です。精力の減退、意欲の低下、尿意コントロール困難、脚力の衰えと四肢の痛み、排便の不調、睡眠の質の変化など、知識で知っていた症状が、自分自身の加齢変化として日々実感されるようになってきたのです。つまり以前は必ずしも実感を共有できていなかったと思いいたりました。それでもさらにまだ越えなければならない厳しい老化の過程が自分に残されていることを日々感じつつ、共感力の高まりを実感しながらも複雑な思いで日々診療に励んでおります。本年もよろしくお願いいたします。(H31.01.17)

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検査では異常ありません

 現代西洋医学の診療で困るのは微妙な症状があるのに検査で異常がない場合ではないかと思う。ちょっとしたふらつきとか、頭痛、手がしびれるなど微妙な症状の場合、CTやMRIの検査を行って異常がないときに「特に異常はありません」と言って帰されたと言って当院に見える患者さんが少なくない。明らかにMRIなどの画像で異常がないと具体的な治療法に結びつかないため、西洋医学では対応に困ると思われる。
 しかし患者にとっては問題が解決したわけではないので、内心不満に思いながらも引き取らざるを得なくなるのだろう。特に異常はありませんということは、こちらでそれ以上することはありませんという意味も含まれているのではないかと思う。
 そこで少し意地悪くはあるが、「あちらの先生に症状はよくなっていないのにどうすればいいのか聞かなかったんですか?」とこちらから聞いてみるのであるが、ほとんどは何も聞けずに黙って帰ることになっているようである。
 漢方の場合にはもともと画像診断をもとに治療法がきめられているわけではない。気の回り、血の回り、水の回りの異常により微妙な症状が起こると考え、症状の組み合わせによって具体的な処方を導き出し治療に結びつける。鍼灸の治療も同じである。
 したがって微妙なバランスの崩れから微妙な症状を引き起こすという基本的な考え方で治療法が組み立てられているので、漢方の場合は西洋医学的に検査で異常がなくても何とか対応でき、治療の幅が広いのではないかと考える。
 ところで西洋医学が劣った医学であるというわけではない。画像診断で異常が見つかる場合には威力を発揮するのである。また西洋医学は科学的発見の蓄積により、これまで見えなかった異常を何とか見えるように工夫して、治療に結びつける努力を続け素晴らしい治療効果を上げていることも事実である。
 ただそれぞれの医学には得手不得手があるということで、検査で異常が見つからない場合には東洋医学の方がより有効な治療が見つかりやすいということではないかと考える。

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対症療法と根治療法

 治療には対症療法と根治療法があることはよく知られている。
 対症療法とは、さしあたり困っている症状を抑え込むことである。例えば風邪をひいて頭痛や発熱があるとき、体温を下げるために解熱剤を飲むようなことであったり、或いは虫垂炎で吐き気や腹痛があるときに鎮痛剤を処方したりすることである。
 風邪の発熱は体が冷えて体温を自動調節で維持できないときに悪寒、発熱という生体反応を起こして体温を維持しようとする体の反応とみるなら、解熱剤で体を冷やすということは治癒機転を妨げることになる。一時的には熱冷ましで楽になっても風邪をより治りにくい状態にしてしまうことは、現代医学でも知られるようになってきた。
 また虫垂炎で腹痛を鎮痛剤で押さえてしまうことは痛みによる病気の進行具合をわからなくしてしまうので、治療方針が決まるまでは絶対に痛みを止めていけないと研修医のときに厳重に注意された。しかしそうは言っても症状があまりにも強い場合は苦痛を和らげるための対症療法は必要でないかということも一理はあるが、病気の根本的な治療方針が決まったうえでの対応となる。
 このように根本的な治療方針が決まらないと対症療法は危険である場合もある。リウマチについては西洋医学的には自己の身体組織の膠原繊維に対する自己抗体による抗原抗体反応によって誘発される炎症であるとされ、それに対する消炎効果を狙った治療を行う。以前はボルタレンなど消炎鎮痛剤であったが、さらに消炎作用の強いステロイド剤に変わった。ステロイド剤は副作用が強いので診断基準を満たすまで使用を待っていた。しかしそれまでに炎症による関節の破壊がかなり進むため、さらに早い時期に治療を開始するべく免疫抑制剤や生物学的製剤に治療を始めるように変わってきた。よく見るとそれらもある意味では対症療法である。根本治療は自分の体が自分の体を壊す自己抗体が生産する理由を解明し、そうならない治療を行うこと、あるいは病状を悪化させない具体的な生活指導ではないかと考える。
 逆流性食道炎の治療も同じように見える。現代医学では胃酸の分泌を抑えて逆流する胃液の量を減らす薬物療法を行う。病気の仕組みをよく考えるとストレスにより消化管の運動が抑制され、胃から十二指腸への排泄機能が悪くなり胃液が停滞し食道に逆流するためにおこる炎症と考えられる。すると消化管の運動を正常に戻すこと、そしてその運動を抑制するストレスに対する体の反応を弱め、ストレスを緩和、回避することが根本治療につながるのではないかと考える。最近胃酸の分泌を効果的に抑制する薬剤の長期使用による弊害の記事をよく見るようになった。
 漢方にも対症療法や根治療法と似た考え方があり、標治と本治と呼んでいる。漢方方剤は対症療法と根本的な治療をまず考えるように組み立ててあり、処方していると常に根治すなわち本治とは何かということを考えさせられる。
 本治とは何かを具体的に示し漢方処方や生活指導に結びつけることができればより理想的な治療ができることになる。そのためにはより本質的な病気の成り立ちに対する理解を深めることが必要であるが、その理解が不十分である病気も少なくない場合に治療の限界を感じる。

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漢方の方について

 漢方の方は方向の方である。処方の方も同じ方であろう。そこで方の意味が問題になる。方は方向の方であるが漢方にはどのような方向があるのだろうか?
 漢方における病気の評価の物差しには陰陽・表裏・寒熱・虚実という物差しがある。まず陰陽の物差しのうち、陽は体の新陳代謝が旺盛で体温調節には適度に体温を下げる必要のある状態である。逆に陰は体温調節のために体の新陳代謝を賦活して体を温める必要のある状態となる。そこで漢方の方は体を温めるべきか、冷やすべきかの方向を指していることが理解されてくる。従って診察によって陰陽の方向が決まると、治療薬もその方向に従った処方となる。
 例えば葛根湯であれば風邪の初めに頭痛・発熱・悪寒・首筋残りがある時に使うのであるが、風邪は冷えによって起こっているので、温める治療となるが、薬が効果を発揮すると発汗して解熱する。冷やす部分もあるので紛らわしいが、全体的には熱を下げるべき陽の病態となっている。
 真武湯は内臓が冷えて、元気がなく、立ちくらみがして横になると楽になるような状態で下痢をするときに使う。これは新陳代謝が低下しているので、温めるための処方になっている。
 このように漢方の治療では温めるのか冷やすのかという方向が大事で、それを間違えると病気は治りにくくなったり、こじれたりするのである。 
 そこでより効果的な治療を行うために、さらに療養生活の方向の問題がある。冷えて悪くなる病気であれば、当然体を冷やさないように注意し、温まりやすいような生活を心がけなければならないことになる。薬で温めようとするのに、例えば冷たい水を呑んで腹を冷やすことは治療に逆行することで、薬の効果を打ち消してしまう。
 外来診療で見える患者さんでは特に冷えが問題になる場合が多く、体を冷やさないように、冷たい飲み物食べ物は避けるようにと注意する。アイスクリームやスイカや梨、柿など体を冷やす果物や、甘いもの、またコーヒーなど苦いものは体を冷やすので、体を温める治療が必要のある人は避けるように注意する。最近また暑い夏になってきたが、クーラーや扇風機の使用も冷えを考えて調節するようにと指導している。
 このように衣食住についても漢方処方の方向に合わせて養生しなければ治療効果は十分に上がらないことを理解してもらうようにしている。

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プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

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