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口臭について

 時に口臭が気になるという人が見える。歯科で虫歯をチェックし、歯茎の掃除をし、うがいをこまめにしてもよくならないというのである。
 口臭は漢方では胃熱という。つまり胃のあたりに熱があり、そのために匂いが強く出てくるのである。例えば気温が高いと液体は蒸発しやすく、動きも活発になり拡散しやすくなるので、胃に熱があると匂い物質も目立つようになると考えるのである。この場合の熱は口の中が熱っぽい、口が乾きやすい、つばが粘るなどの症状を指す。
 すると臨床的には胃熱はどういうときに起こるかということが問題で、それを知らないと根治には至らないことを説明している。睡眠不足、ストレスによる緊張では内熱が発生し口が乾く。すると冷たいものを飲んで口腔を冷やそうとする傾向が見られるが、口の中や胃を冷やすと体は冷えた部分を温めようと更に熱を出し、余計に胃熱が悪化する。教科書ではこってりとしたものを食べて胃熱が助長されているとも書いてあるが、それよりは過労やストレス、睡眠不足などが原因のことが多い印象を受ける。
 調子が悪くなったころ何かトラブルでもなかったか確認する必要があり、そのあたりを指摘し、問題を解決するほうが根治につながることを理解してもらう必要がある。
 具体的な漢方処方では半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を使うことが多い。そして冷たいものを控えるように、ストレスになっている問題は解決するように、睡眠を十分とるように指導する。

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平成30年冬のインフルエンザ

 昨年の今頃もインフルエンザが流行していたが、その臨床症状が今年とは大分ことなっていた。高熱が出て汗をかかずに、体を触ると非常に熱く、強力に発汗させ、熱を下げる漢方処方、大青龍湯(だいせいりゅうとう)を処方する症例が多かった。ところが今年は症状が違っている。
 今年のインフルエンザは頭痛、発熱があり、あまり高熱は出ない。関節痛も少しはあるが、くしゃみ、鼻水なども出て、のどが痛く、少し咳がでて、食欲も落ちてくる。風邪の初期に使う葛根湯(かっこんとう)や、麻黄湯(マオウトウ)、桂枝湯(けいしとう)とも違う症状で、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)と小柴胡湯(しょうさいことう)を組み合わせるか、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)と柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を組み合わせるような複雑な症状が多いような印象がある。風邪の治りかけのときは咳だけ残り、長引いて麦門冬湯(ばくもんどうとう)や柴胡桂枝乾姜湯などを処方することが多いかった。
 インフルエンザワクチンを打ったのにA型にもB型にもかかったという人もいる。インフルエンザも風邪の一種であるから、冷えに対する防寒対策をしっかりして、十分な睡眠をとり、疲れをためないようにすることが養生の基本である。予防接種をしたから養生しなくても風邪はひかないというわけにはいかないことを知るべきである。

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肥満と糖尿病

 肥満と糖尿病は密接な関係にあるということで肥満が注目されているが、中には相当な肥満で血糖値は勿論HbA1cも正常な人がいる。そのような人は血糖値が正常ということで多少肥満していても安心しているような様子がうかがえる。そこでなぜ肥満なのに血糖が上がらないかを考えてみた。
 インスリンが血糖を下げるホルモンであるのは、糖尿病でインスリンが不足して血糖が上がるのでわかりやすいと思う。そもそもどのようにしてインスリンが血糖を下げるかが問題である。
 インスリンはまず血糖すなわちグルコースを筋肉に消費させることによって糖を下げる。するとあまり体を動かさない現代人の生活では糖は下がりにくいという面があり、運動療法の必要性と関係してくる。
 もう一つのインスリンの働きはグルコースを脂肪に変えて血糖を下げる。運動でグルコースが消費されない場合、グルコースがどんどん脂肪に変換され肥っていくのである。これはインスリンの同化作用すなわち脂肪を体に蓄えるという側面である。
 つまりインスリンが十分に分泌されているが、運動不足でグルコースが筋肉に消費されないとき、血糖を下げるためにグルコースがどんどん脂肪に変換され蓄積され、肥満になるのである。普通は高度の肥満になるとインスリンの作用が鈍くなり、あるいは膵臓が疲れてインスリンのホルモン産生が低下し、インスリンの作用が低下し、血糖やHbA1cが上昇傾向を示し、一定期間が過ぎると糖尿病といわれる数値になる。
 ところが中には極端な肥満でも血糖が正常で糖尿病でない人がいるのである。すなわちインスリンの分泌がよく、効きが悪くならなければ糖尿病にならずにいくらでも体重は増えることができるということである。
 一般的にアジア人とくに日本人はインスリンの分泌能力が低いとされている。これは大した肥満にならずに糖尿病になりやすいことを意味している。一方西洋人はインスリン分泌能がアジア人に比べて高いというデータが紹介されていた。これは西洋人では糖尿病になる前の肥満の程度が大きいことを示している。これが、欧米人が一般的な印象で肥満傾向の強い理由でないかと考える。
 たまにアメリカなどで三百キロを超す肥満の人が紹介されることがある。糖尿病かどうかは紹介されていなかったが、太り続けるということはインスリンの働きが十分で、グルコースがどんどん脂肪に変化した結果であることを示しているので、多分糖尿病にはなっていないと推測される。
 此の事からインスリンさえ十分分泌されればいくらでも体重は増えるといえる。ところが多くの場合インスリンの分泌能力には限界があって、それをこえるとインスリンの効きが悪くなるか、膵臓が疲れて分泌量が減ってインスリンが働くなり、血糖が上がり、また血糖から脂肪への合成ができないので、痩せて典型的な糖尿病になる。

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過活動膀胱

 年をとると尿が近くなる。これまで頻尿は前立腺肥大症で一回の排尿で完全に膀胱を空っぽにできないため残尿が発生し、それが少しずつ増えて、膀胱容量がいっぱいになるまでの時間が短くなって尿が近くなると考えていた。ところが自分が年をとってきてわかったのは、前立腺肥大症がなくても、比較的少ない量の尿に膀胱が過敏に反応して尿意が起こるため頻尿になることがわかってきた。つまり過活動膀胱である。
 そしてその尿意は、一定時間は続くがそれを過ぎると緊張がゆるんで収まることも観察すると分かってきた。
 そこで過活動膀胱の治療薬は膀胱の緊張を緩めるような薬を使用することになる。
 ところが別の問題も絡んで実際の臨床ではより複雑になっていることが実感された。それは加齢にともなう精神的動揺である。急におしっこがしたくなって慌ててトイレに行こうとするが間に合わずに漏らしてしまうことの精神的なショックが影響していると思われる。大の大人が失禁する。するとこれまでのプライドが傷つき、もう年を取ってしまったという衝撃は決して小さくないと思われる。そのショックで気が動転して踏ん張りがきかず、失禁が常態化していくことに対する不安と恐怖が大きくなる。そしてそのことでパニックになるのではないかと推測されるのである。
 そこで薬以外の過活動膀胱への対処法を研究してみた。この場合尿意の知覚過敏はあるが、膀胱括約筋がマヒしているわけではないのがミソである。膀胱括約筋がマヒしていないのであるから、尿意が強くなっても気持ちを集中して排尿を我慢すれば漏らさないはずである。しばらくすると尿意が弱くなってくるので、そこでゆっくりゆとりをもってトイレに行けばよいのである。それを自分で実行してみるとうまくいくので患者にはそのように指導している。するとしっかり尿意を踏ん張れば漏らさないということを学習し、自信ができ、精神的な動揺も納まるという計算である。
 ただ注意すべきは水を呑みすぎて膀胱が充満しているときは尿意をあまり長くは持ちこたえられないので早めに排尿した方が良いということである。
 先日離島の友人からそのような相談を受けたので、全神経を集中して尿意を我慢する訓練をするようにしたらいいと教えた。久しぶりに同期会で会ったら「あれでうまくいった。お前は名医だなあ。」といわれ自分の考えは間違っていなかったと内心うれしかった。
 ちなみに漢方では残尿感に効く猪苓湯や筋肉のけいれんを抑える芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などを組み合わせるといいのではないかと考える。

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発達障害について

 漢方をやっていると現代医学的に難しい患者さんが見える。小児では発達障害とおもわれる場合が時に在る。発達障害の人たちは精神的にも不安定なため漢方薬で精神的な興奮を抑える抑肝散などを使う事が多いが、それは対症療法で原因は脳の機能障害にあることが近年明らかになってきた。
 最近NHKスペシャルで発達障害における最新の知見の紹介があった。発達障害には大まかに三つのグループに分けられ、三つのタイプがそれぞれ混ざり合うと色々なバリエーションの場合があると云う事であった。其の中で知覚過敏があることが興味深かった。聴覚過敏があると周囲の騒音が統べて耳に届き、かんじんの聴きたい音がかき消され、はっきりしなくなり、効果的な学習ができないと云う。普通の人では脳が騒音に慣れ、周囲の音を無視して聞きたい音だけを拾い上げるように調節されるので、うるさい教室のようなところでも困らないと云う。また光に過敏な場合は明るすぎるように感じて周囲がまぶしく白く見え、目が開けておれないほどで疲れると云う。また光の粒が飛んでくるような感覚の場合もあると伝えていた。
 番組には三人の発達障害の方が紹介されていたが、何れの方も一流大学を卒業しているので、知的発育障害というよりは知覚過敏による不適応で社会生活が困難であった例であった。普通の人との感覚のずれがあることをお互いが知らないとコミュニケーションに支障をきたし、周囲とうまく協調できず、うつや適応障害などで引きこもる事になって孤立してしまうというのである。
 このような事実は発達障害の人たちが大人になり、自分の感覚を的確に表現し、一般の人との比較で感覚のずれが明らかになってきて初めて理解されるようになったという。
 イギリスでは既に社会で発達障害が認知され、例えばデパートなどではクワイエットタイム、すなわち音を絞り「静かな時間」を設けて、照明を落としたら知覚過敏の人たちの買い物客が増えたという事実が紹介されていた。
 クリニックに見えた患者でも音に敏感で学校生活のつらそうな子や、好みが極端に偏り、いつも不機嫌な不登校の子、眩しそうにして瞼を神経質に動かす成人の方もいた。いずれも一般の人の感覚では理解できないため、精神的にきびしい状態にあった。
 これは薬だけで対応できるものではなく、其の人にあった生活空間の条件設定をしなければならないが、それには専門的な検査が必要になる。そうすればその人の能力を最大限に発揮でき、精神的にも安定すると思われ、いわゆる根本的な解決につながる可能性が見えてくる。
 今後の研究の進展に注目し、患者の心の理解に役立てたいと思ったことである。

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プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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