FC2ブログ

頻尿と水分摂取について

 クリニックの案内の診療科目に泌尿器科と書いてあるものだから、膀胱炎の患者さんがよく見える。泌尿器の病気の専門的な診察をするというより、普通の泌尿器科の西洋医学的治療では効果が出にくくて困るような症状の方に来てもらえるようにという案内である。
 それで尿が近いという患者さんも時に見える。尿が近い場合、加齢により尿が近くなるのは高齢者の場合よく見られる症状であるが、ここでは働き盛りの人で頻尿以外に残尿感や排尿痛という膀胱刺激症状のある場合について考えてみる。
 多くの場合の膀胱刺激症状は膀胱炎による症状である。膀胱炎は外側の尿道口から尿道を通って細菌が膀胱の中に入り繁殖することで炎症が起こるとされている。その時排尿後に尿が残っていると、残った尿の中で細菌が繁殖するために細菌性の膀胱炎が起こると考えられる。ところで細菌が繁殖する場合には尿が濁る、つまり尿を顕微鏡で見ると白血球が多数認められるのが細菌性膀胱炎の一般的な所見である。ところが残尿感、排尿痛がありながら尿が濁っていない場合がある。つまり細菌感染でないのに膀胱刺激症状がある場合がある。細菌による症状は抗菌剤で簡単に解決できるが、細菌がいないと抗生物質が効かないのである。
 では膀胱炎でないのに刺激症状がなぜ起こるのか考えてみよう。働き盛りの人は排尿する暇が惜しいほど忙しい。すると水を飲むと尿量が増えてトイレの回数が増えると仕事に支障をきたすので、トイレに行く回数を減らそうと飲む水の量を無意識に減らしてくる。すると尿の回数が減ってくるのであるが、飲む水の量が減ると体は必要な水分量を確保するために尿を濃縮して尿量を減らす一方、大便からの水もできるだけ吸収するので、コロコロ便になってしまう。すると尿の回数は減り、便秘傾向になってくる。さらに続けていると尿は更に濃くなり、塩水のような尿になり、膀胱粘膜を刺激するので、膀胱炎のような症状が出てくる。すると水は控えているのに尿の回数がどんどん増えるが、尿量は減って出にくくなってくる。そして訳の分からない状態になってクリニックに駆け込んでくるのである。
 水分摂取が少ないため尿が濃くなり、そのため膀胱が刺激され頻尿になっている点に注目すれば、必要最低限の水分は摂る必要があることは容易に理解できるはずである。十分な水分を摂ると薄い水のような刺激の少ない尿になるので膀胱へ刺激が少なくなるので症状が改善してくる。
 膀胱刺激症状があり、口が渇く場合に使われるのが猪苓湯(ちょれいとう)、胃腸の弱い人は清心蓮子飲(せいしんれんしいん)がいいとされている。ただ水分の摂取が十分でないと、漢方薬の効果も十分発揮されないことを理解しなければならない。なぜなら症状の根本原因は尿の回数を減らそうと飲む水の量を極端に抑えたことにあるからである。
 これから暑い夏に向かう。汗をかくので、水分摂取不足は、膀胱刺激症状以外に熱中症なども引き起こすことが考えられ、併せて注意を要する必要がある。飲む水の量は多すぎても不足しても困るのである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

耳鳴りの受け止め方

 耳鳴は外来における比較的多い主訴の一つである。多くの場合原因不明で、加齢に伴うことが多いためか、耳鼻科の先生には正面から取り上げてもらえないことが多いようで、漢方でどうにかなりませんかと来られる患者さんが多い。耳鼻科で難しいことは漢方でも難しいのが普通であるから、こちらも困ってしまうのである。
 漢方では病気の異常を気血水の異常で考えるので、耳鳴も気血水の異常で考える。つまり、現代医学的には聴神経の異常から耳鳴を起こすと考えると、神経の不調は血の巡りの悪さや神経の浮腫が絡んで耳鳴りが起こり、それに対して気持ちも落ち着かなくなる。多くの場合加齢による変化であるとみなされて、特効的治療薬がないので、何となくあきらめてもらうのであろう。漢方では老化に伴う症状によく使われる、八味地黄丸(はちみじおうがん)や頭痛やめまいに処方される釣藤散(釣藤散)などで有効な場合があるとされている。
 そこで漢方薬を処方するときに、「もし少しでも軽く成ればラッキーと思ってください。」と言うことにしている。なぜなら漢方薬でもあまり変化がないことが多いという印象を持つからである。
 そして聞いてみる。「耳鳴で昼間困りますか? 耳鳴が作業の邪魔になりますか?」と。すると例外なく、「仕事をしているときは全然問題になりません。寝ようとするときに問題になるのです。」とくる。そうなればしめたものである。「そうですよね。すると耳鳴はそんなに昼間の生活をさまたげてはいないですね。するとそれは気持ちの問題ということになりますね。」ということにしている。そこで蝉の鳴き声の話をする。耳鳴は多くの場合遠くでセミが鳴くように聞えるからである。「あなたはセミが鳴いているということで、うるさいから石を投げて蝉を追い払いますか。」するとたいていの人は蝉の鳴き声を気にしていない。「そうでしょう。蝉がうるさいといって追い払おうとする人はおりません。なぜならセミの鳴き声として受け入れ、文句を言っても仕方がないとあきらめているからです。」そこで、「耳鳴りも蝉の声と思って受け入れてください。」と話を収めることにしている。たいていの場合にそれで笑っておしまいということになる。
 最近耳鳴りが脳の働きと関係していることがNHKの“ガッテン”で取り上げられた。内容は自分が説明した、脳の意識のこだわりの部分で問題になると説明していたようで、自分の説明も案外的外れではなかったと思った。
 番組では耳鳴りに注意が向くから気になり、気になるから注意が向くという悪循環が起こる、滝の音を録音したノイズを流すと耳鳴りが気にならなくなり、よく眠れるようになったという。
 昼間仕事で注意が耳鳴りから離れている間は耳鳴が問題にならないということは、そのひとは既に耳鳴りが注意の向け方で問題にならないことを経験し実感しているのである。すると静かな夜に耳鳴りが聞こえるときは、セミの声だと思うことで、気にしても仕方のないことであるというごく当然な感覚に気持ちを切り替えられることを示している。我ながらいい説明だと思っている。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

低音が出ないので何とかしてほしい

 七十歳代の男の人が声の低音が出ないので何とかしてほしいと言って来られた。高い音は出るというので、声を出す神経は大丈夫であるということは分かった。
 声の専門は耳鼻科であるから、「耳鼻科の先生はなんと言われました?」と聞いたところ、声帯が完全には閉じていないと言われたという。すると治療は両側の声帯の隙間をふさぐことになるのであるが、普通の常識ではそういう方法はないので、どうにもなりませんといいたくなる。
 ところが漢方薬の効果をうまく応用すると何とかなるかもしれないと思いつくことがあった。70歳というと一応加齢による影響を考える。老人の体は若い人よりは体の水分の割合が少ない。つまり若い人より組織は水分の割合が少ない。すなわち枯れた組織は縮んで細くなる。すると若い頃密着していた声帯も水分が少なくなった分だけ組織がしぼんで細くなり、隙間ができたのではないかと考えてみた。
 するとその治療は組織に潤いを与える漢方処方を飲んでもらって、少しだけ組織をみずみずしくすれば隙間は埋まるのではないかと考えられる。
 加齢により組織の水分が少なくなった状態を漢方では腎虚(加齢)による陰虚(脱水傾向)と呼んでいる。すると“腎を補う”つまり腎臓の水を貯える作用を強化し、声帯すなわち“肺”のあたりを潤す薬を処方したらいいのではないかと思いついた。そこで体に潤いを与える漢方薬を処方した。さて結果はどうだろうか?
 暫くして来院されて声の具合を聞くと、「何となくいい感じです。」と答えられた。少しでも良く成ればしめたものだと考え、引き続き漢方薬を内服してもらうことにした。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

吃逆について

 吃逆とはいわゆるしゃっくりの事である。吃逆の原因は不明のことが多く、突然起こっていつの間にか治ることが普通で、治療上問題にならないことが多い。ところが時には何日も吃逆が続くという人がいる。
 長いこと吃逆の患者さんを診なかったが、最近立て続けに二人の人が見えた。どちらも男の人で原因はよくわからないが何日も吃逆が止まらないという。原因はわからないことが多いが、私の経験では胃腸が冷えているが多いような印象を受ける。
 重症の吃逆の症例は多くはない。かなり以前のことになるが外科医として手術していた頃、術後の患者さんで吃逆が止まらないことがあった。腹が冷えていると考えて四逆湯(しぎゃくとう)という煎じ薬を処方したら見事に効いて吃逆が止まった。そのとき吃逆は胃腸の冷えからくるということを教えられた。他の治験例をみると、難治性の吃逆に呉茱萸湯(ごしゅゆとう)が効くという報告も見られた。呉茱萸湯は胃腸を温める薬であるから、やはり吃逆は腹の冷えが絡んでいる病態であることがわかる。
 吃逆の有名な処方に柿蔕湯(していとう)がある。柿蔕は柿の蔕(へた)のことで、薬能として『苦・微温、逆気を下降し、止呃の用薬、胃気上逆の呃逆に適する。寒熱虚実に基づき適当な配合を行えば著効がえられる。』と成書にかかれてある。
 ちなみに柿蔕湯は丁香、柿蔕、生姜の三味からなる処方。丁香は“辛温、特有の芳香をもち脾胃を温めるとともに陽壮泄肺して逆気を下降する。”とある。生姜も辛微温で温める作用があるから、柿蔕湯ぜんたいとしても温める作用があり、温めてしゃっくりを治す薬であることがわかる、
 また熱性の吃逆には半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)とあるが、構成生薬をみると黄連・黄芩が胃熱を冷まし、半夏・人参・乾姜・甘草は胃腸を温める作用があることから、この場合も胃腸の冷えに熱が加わった病態であることがわかる。
 いずれにしても治療処方の効能からみると吃逆は胃腸の冷えが基本にあると考えてよさそうである。つまり腹を冷やすような飲み物や食事が吃逆の原因であると言えそうである。従って冷たいものを控え、胃腸を温めるように呉茱萸湯や人参湯(にんじんとう)、少しのぼせて舌苔が黄色い場合には半夏瀉心湯など、または柿蔕湯などで治療するとよい。そして冷たいものは避けることである。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

肋間神経痛と尾骨の痛み

 最近肋間神経痛の患者さんが見えた。肋間神経とはあばら骨の下縁に沿って、背骨から胸の前にめぐる神経で左右十二対ある。左の乳房辺りが痛いというのである。
 肋間神経痛と診断して、その痛みの部分の肋間神経を辿って背中の方へ回り、正中線上の脊椎の棘突起を確認し、親指で押すと圧痛を見つけることができる。多くの場合その棘突起の捻じれが原因で神経痛が起こっている。そこで棘突起に反対側から痛む方向に力を加えると背骨の捻じれが解消して瞬時に痛みが取れる。その整復に大した力はいらないが効果はドラマティックである。肋間神経痛は腹の冷えに関連して起こることが多いようで、腹を温める作用のある大建中湯(だいけんちゅうとう)と似たような効果のある当帰湯(とうきとう)を使うことが多い。
 またまれな痛みにではあるが、偶に尾骨の痛みを訴える人がいる。尾骨の亜脱臼が原因らしい。その尾骨の整復の仕方は、肛門診の要領で患者を膝を抱えるように側臥位になってもらい、人差し指を肛門に差し入れる。その人差し指と同じ手の親指の間に尾骨を挟み、尾骨を伸ばすように力を加える。するとそれによって亜脱臼が整復されるらしく、痛みが取れる。これは治療の部位が部位だけに最初からやるのはためらわれ、少し内服薬など試みながら、よくならないので仕方なくやるという形にした方がやりやすい。その方が患者もあきらめて治療を受けやすいのではないかと考える。
 いずれの治療もやってみると簡単ではあるが、教科書には載っていない。自分の経験か伝聞によって身に着けた治療法である。
 求めよ!さらば与えられん!

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

リンク
書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

ブログ内検索
最近の記事
カテゴリー
月別アーカイブ