雨降りの梅雨で目立つ訴え

 今年は梅雨明け間近になって雨が降り続いていた。梅雨の期間の訴えで気になるのが、雨が降る前の頭痛である。雨降り前の頭痛は漢方的には水毒の症状とされている。もともと浮腫んでいる人は頭の中の脳脊髄液も増える傾向にあり、頭皮も浮腫んでいる。雨降り前は湿度が上がるので体表面からの水分の蒸発すなわち不感蒸泄の効率が悪くなるので、体の表面からの水の排せつも悪くなり、脳の浮腫みも強くなり、頭痛が起こると説明する。
 体表面からの水の排泄が悪いときは尿量を増やしてむくみをとればいいわけで、漢方では五苓散(ごれいさん)が使われ、雨降り前の頭痛によく効いている。
 身体が浮腫みやすい状態は女性では排卵後の黄体期に起こりやすい。すると生理前は黄体ホルモンの作用で体が浮腫みやすい時期になる。したがって月経前緊張症の症状ではイライラ以外に頭痛を伴うことが多く、加味逍遥散(かみしょうようさん)に五苓散を併用すると頭痛がよくなる場合が多い。
 身体が浮腫みやすくなる生活習慣に炭水化物や糖分の摂りすぎがある。果物や野菜の栽培では果実の糖度を上げるために収穫前にできるだけ水分の補給を少なくするという。糖には水分を保持する作用があるため、水不足の栽培環境では植物は糖分が増やして命をまもるというのである。このように、糖分とむくみには興味深い関係があり、人間の場合は糖をとりすぎると逆に浮腫んでくるのではないかと考える。従って頭痛もちの人は普段から糖分の摂りすぎに注意する必要がある。
 このように漢方では症状を改善する漢方処方の効能から生活習慣の問題点を推測し、生活上の課題を改善して根本治療に結び付けるのである。頭痛の背景には体のホルモンバランスのリズムや生活習慣が複雑に絡んでいることが考えられる。

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ジャンル : 心と身体

発達障害について

 漢方をやっていると現代医学的に難しい患者さんが見える。小児では発達障害とおもわれる場合が時に在る。発達障害の人たちは精神的にも不安定なため漢方薬で精神的な興奮を抑える抑肝散などを使う事が多いが、それは対症療法で原因は脳の機能障害にあることが近年明らかになってきた。
 最近NHKスペシャルで発達障害における最新の知見の紹介があった。発達障害には大まかに三つのグループに分けられ、三つのタイプがそれぞれ混ざり合うと色々なバリエーションの場合があると云う事であった。其の中で知覚過敏があることが興味深かった。聴覚過敏があると周囲の騒音が統べて耳に届き、かんじんの聴きたい音がかき消され、はっきりしなくなり、効果的な学習ができないと云う。普通の人では脳が騒音に慣れ、周囲の音を無視して聞きたい音だけを拾い上げるように調節されるので、うるさい教室のようなところでも困らないと云う。また光に過敏な場合は明るすぎるように感じて周囲がまぶしく白く見え、目が開けておれないほどで疲れると云う。また光の粒が飛んでくるような感覚の場合もあると伝えていた。
 番組には三人の発達障害の方が紹介されていたが、何れの方も一流大学を卒業しているので、知的発育障害というよりは知覚過敏による不適応で社会生活が困難であった例であった。普通の人との感覚のずれがあることをお互いが知らないとコミュニケーションに支障をきたし、周囲とうまく協調できず、うつや適応障害などで引きこもる事になって孤立してしまうというのである。
 このような事実は発達障害の人たちが大人になり、自分の感覚を的確に表現し、一般の人との比較で感覚のずれが明らかになってきて初めて理解されるようになったという。
 イギリスでは既に社会で発達障害が認知され、例えばデパートなどではクワイエットタイム、すなわち音を絞り「静かな時間」を設けて、照明を落としたら知覚過敏の人たちの買い物客が増えたという事実が紹介されていた。
 クリニックに見えた患者でも音に敏感で学校生活のつらそうな子や、好みが極端に偏り、いつも不機嫌な不登校の子、眩しそうにして瞼を神経質に動かす成人の方もいた。いずれも一般の人の感覚では理解できないため、精神的にきびしい状態にあった。
 これは薬だけで対応できるものではなく、其の人にあった生活空間の条件設定をしなければならないが、それには専門的な検査が必要になる。そうすればその人の能力を最大限に発揮でき、精神的にも安定すると思われ、いわゆる根本的な解決につながる可能性が見えてくる。
 今後の研究の進展に注目し、患者の心の理解に役立てたいと思ったことである。

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プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
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