最近目にする不思議な頭痛

 最近頭痛を訴えてくる人が少なくない。その頭痛の背景が複雑で対処療法的対応で根治は無理と思われたので、そのからくりを整理してみた。
 頭痛を訴える更年期の女性が来院した。最近急に体重が増え、頭痛がひどく、つらいというのが主訴である。体重増加は10kg以上、口が乾くので冷たいものをよく飲むという。肩こりもひどく、体がだるい。最近この症例のように、食欲はあり肥満であるのに、体がだるくてやる気がないという矛盾する訴えの人を見る。元気がない場合、食欲もなくなるのが普通であるのに、食欲はあって、体重がどんどん増えている。そんな時、炭水化物や砂糖の過剰摂取、いわゆる炭水化物中毒、砂糖中毒ではないかと考えるようにしている。本人に確認すると、どんどん炭水化物を食べだして体調が悪くなったというのが通例である。
 糖質は食べれば食べるほどもっと欲しくなるという性質がある。血糖が急激に上昇するとインスリンも大量に分泌され、急速に血糖が下げられ、低血糖になり、さらに甘いものが欲しくなるという悪循環が起こるためと考える。
 口が乾くので水をよく飲むというのも体の仕組みからくる。体温を一定に保とうとする人体は、冷たいものを飲むと冷えた部分を温めないといけないから、上部消化管を温めようとして熱を出す。すると余計に口が乾くのでさらに冷たいものを飲んでしまうという悪循環が起こる。
 先の人の場合、短期間に体重がかなり増加しているので、甘くて冷たいものを飲み続けたのだろうと推測できる。
 また女性は生理周期に伴いホルモンバランスが変化する。更年期でない若い人の場合は排卵から生理前までの黄体期は黄体期でホルモンの作用で浮腫み、体重が減りにくく、頭痛、イライラなどの症状が起こる。いわゆる月経前症候群である。更年期になるとホットフラシュが起こったり、のぼせたりする。そしてホルモンバランスの変化は水のバランスの変化を伴う。
 このようなホルモンバランスの変化をともなう状態に甘いものや炭水化物を摂りつづけると浮腫みや体重の増加とともに、頭痛がひどくなり、体がだるくなり、やる気もなくなるという複雑な状態になる。
 おそらく検査では糖質の摂りすぎで血糖が高めに出るか、脂肪肝で肝酵素の値が少し上がる程度の変化はあるかもしれない。
 したがってこのような場合、冷たくて甘いものに習慣性・依存性があるということを理解してもらって、糖質を制限するという生活指導が最も重要になる。その上で症状に対応した漢方薬を処方し、鍼灸治療、頸椎の異常などを治せばよい。
 月経前緊張症や更年期障害には加味逍遥散(かみしょうようさん)が効くことが多い。頭痛には五苓散(ごれいさん)、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)などが効く。
 この年齢になると首の疲れがたまって頸椎がストレート化し、捻じれているのが普通であるから、鎖骨調整で早く症状を取ることもできる。
 頸椎が捻じれると首が回らなくなる。首の回らない状態は頭痛、めまい、頭がぼーっとするなどの不定愁訴が起こり、頭の働きが鈍くなることと関連づける。そして金がたまらないすなわち金がないという世事に結びつけると皆さん納得してくれる。

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夏風邪への対応

 風邪は一般的に風寒の邪、つまり冷たい風に侵され、体が冷えることによって起こる。ところが最近外来では暑い夏でも風邪をひいて治りにくいという人が少なくない。なぜ暑い夏に風邪をひくのか問題である。
 このところ毎日最高気温34度の日が続き、最低気温も25度を超す熱帯夜が続いている。普段冷たいものは体に良くないと言い続けている自分も、この暑さには参って、クーラーの設定温度は高めにするようにとその使用を進めている。そのような状況で、冷たい飲食物を摂りすぎたり、クーラーが強すぎたり、薄着をしたり、寝冷えをしたりすることが夏風邪をひく原因であろうと私は自分の経験から推測している。
 私は昨年は何度か風邪をひいて発熱し、気管支炎まで併発し、すっかり健康に対する自信を無くしてしまっていた。今年は幸いにも風邪をひいていないので、昨年との生活上の違いを整理するのも無駄にはならないと思われる。
 寝るときは必ず袖のあるもので肩を冷やさないようにし、タオルケットを掛け、さらに必要なら薄い布団を合わせるようにしている。クーラーを使わないと暑くて眠れない。クーラーのタイマーが切れると目が覚めてしまうので、クーラーはつけっぱなしのほうがいいと考えて、衣服や寝具で冷えないようにした。昼間もクーラーの中では極端な薄着はしないように心がけている。このような対応で幸いにも今年はまだ風邪をひかずにいる。
 あまりにも暑いためクーラーを使用すると、温度調節が非常に難しいという経験をしている。直接風にあたると寒いし、温度を極端に下げるわけにもいかない。厚着をすると汗をかいてかえって冷えるし、薄着をすると冷えすぎて体温調節が極めて難しい。そこでなんとなく冷えると感じるときに面倒がらずに被服やクーラーの設定温度調整を面倒がらずにやることが重要であると感じている。以前は問題なかったのだが、と思わないでもないところをみるとこれも加齢変化かもしれない。
 夏風邪の漢方処方は、あまり悪寒を訴えないので冬の風邪の処方とは違っており、一口にこれだというわけにはいかない印象で、診察によって思いつく処方にしている。微熱があり、体がだるく咳が止まらない人には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、痰の切れない激しい咳に麦門冬湯(ばくもんどうとう)を処方することもあった。また夏バテで倦怠感を訴える人が多いので、清暑益気湯(せいしょえっきとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方する機会が多い。

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プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

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