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肋間神経痛と尾骨の痛み

 最近肋間神経痛の患者さんが見えた。肋間神経とはあばら骨の下縁に沿って、背骨から胸の前にめぐる神経で左右十二対ある。左の乳房辺りが痛いというのである。
 肋間神経痛と診断して、その痛みの部分の肋間神経を辿って背中の方へ回り、正中線上の脊椎の棘突起を確認し、親指で押すと圧痛を見つけることができる。多くの場合その棘突起の捻じれが原因で神経痛が起こっている。そこで棘突起に反対側から痛む方向に力を加えると背骨の捻じれが解消して瞬時に痛みが取れる。その整復に大した力はいらないが効果はドラマティックである。肋間神経痛は腹の冷えに関連して起こることが多いようで、腹を温める作用のある大建中湯(だいけんちゅうとう)と似たような効果のある当帰湯(とうきとう)を使うことが多い。
 またまれな痛みにではあるが、偶に尾骨の痛みを訴える人がいる。尾骨の亜脱臼が原因らしい。その尾骨の整復の仕方は、肛門診の要領で患者を膝を抱えるように側臥位になってもらい、人差し指を肛門に差し入れる。その人差し指と同じ手の親指の間に尾骨を挟み、尾骨を伸ばすように力を加える。するとそれによって亜脱臼が整復されるらしく、痛みが取れる。これは治療の部位が部位だけに最初からやるのはためらわれ、少し内服薬など試みながら、よくならないので仕方なくやるという形にした方がやりやすい。その方が患者もあきらめて治療を受けやすいのではないかと考える。
 いずれの治療もやってみると簡単ではあるが、教科書には載っていない。自分の経験か伝聞によって身に着けた治療法である。
 求めよ!さらば与えられん!

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

交感神経過緊張

 最近受診される患者さんの訴えを見ていると、多彩な症状が多いことに気づかされる。例えば頭痛で来院されて、肩こり、頭重、眩暈や、動悸、吐き気などを伴い、場合によっては不安不眠などを訴えることもある。なぜそのように症状が多いのかという理由に最近気が付いた。それは交感神経の過緊張がつづいているからである。交感神経の緊張が持続するため、それにともなう様々な症状が同時に起こるのである。
 人体は自律神経・内分泌・内分泌機構によって体温を一定に保ち、いつでもどこでも活動できるように保たれている。そしてそれは昼間活動し、夜は休息するという一日のリズムにより、エネルギー消費、蓄積のバランスが保たれ、自律神経も交感神経、副交感神経への切り替えをスムーズに行っている。それがスムーズに行われている間は、体は何の違和感もないのであるが、ひとたびリズムが狂うといろいろな症状を引き起こして体の不調として自覚されてくる。
 漢方では病気の原因を内因、外因、不内外因の三つに分けている。外因は風寒暑燥湿熱、つまり気象条件によるもの、内因は喜怒憂思悲驚恐の七情で社会生活のストレスや天変地異の恐怖によってひきおこされる。不内外因は食毒つまり不適切な食事による害、房労(ぼうろう)つまり、過労である。特に最近では多すぎる残業や、夜勤による睡眠不足もそれになるであろう。食事では冷たいものを取りすぎて腹を冷やし、刺激物の摂りすぎや酒飲みすぎなどであろう。そしていくつかの原因が複合的に作用しているのが多くの場合の現実である。例えば過労、睡眠不足、ストレス、冷たい物の摂りすぎなどが同時に作用している。
 これらの病因は人体に交感神経の緊張状態を引き起こし、リラックスしにくくなる。つまり交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかず、緊張しっぱなしということになる。すると精神的にはイライラ、不安がおこり、動悸、喉の詰まりや痞え(つかえ)、胃腸の弱い人は食欲も落ちてくる。身体が緊張していると代謝も少し亢進(こうしん)して微妙に体温も上がって体が火照ってくる。そして寝付けなくなる。この時の熱感を漢方では虚熱と呼んでいる。体は熱いと感じるのに体温計はでは正常の体温を示す。
 このように交感神経の過緊張を示す人の頸椎を診るとレントゲン画像は捻じれや生理的前方への湾曲が失われ、ストレートネックやそれを通り越して後方に湾曲している。それらの骨の変化はまた肩こりや頸椎の伸展制限つまり上が向きにくい、首が回らない不快な症状と関連し、それがまたリラックスを妨げ交感神経の過緊張を助長するという悪循環を形成しているように見える。
 漢方でいう未病は健康で何の違和感もない状態から少し進んで、病気で寝込むほどではないが何となくおかしいと感じる状態である。すると未病の状態ですでに背骨や骨盤の歪みが起こっていてそれが解剖学的な未病の根拠になるのではないかと考えた。
 この状態が進むと原因不明の頭痛や気分の悪さなどから不登校や引きこもりなど深刻な社会的問題にもつながるのではないかと考えられる。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

プロフィール

仲原靖夫

Author:仲原靖夫
昭和51年広島大学卒業、中部病院で外科の研修を終え、八重山病院、アドベンチスト・メディカルセンター、ハートライフ病院、屋比久産婦人科小児科東洋医学センターで西洋医学と東洋医学を併用した診療を続けてきた。現在、『仲原漢方クリニック』(沖縄県那覇市牧志)院長。

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書籍の紹介

東洋医学の雑記帳

仲原漢方クリニック院長のドクター仲原が、1992年から2001年まで、週刊レキオに東洋医学、漢方関連の記事を掲載していたものをまとめた本です。現代西洋医学と東洋医学の病気の考え方の違いや漢方についてわかりやすく解説されています。 冷えの害、不定愁訴について、漢方で癌は治せるか、リウマチと漢方、肩こりについて、風邪について、偏頭痛、不眠、関節痛、自律神経失調症など。

定価:1,000円(税込価格)

発行:(株)週刊レキオ社
(株)週間レキオ社又は全国の書店および「当クリニック」にて販売中

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